みじかいゆめ
□仁王くんの片想い
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「ブンちゃん、パフェ食べに行かん?」
最近の仁王は、おかしい。それはなぜか、毎日のように俺にパフェを食べに行こうと誘ってくるからだ。(まあ仁王の奢りだしついて行くけど) 学校の近くのいつものファミレスに向かう。真田に見つかったら、たるんどるって怒られるから少し早歩きな俺と仁王。ファミレスの中に入ると外のじんわり湿気帯びた暑さとは正反対のさらっとした涼しい風が体を包こむ。いつもの席に座り、メニューを広げる。あ、今日はあんみつがいいな。
「なあ仁王、あんみつ食いてー」
「好きにしんしゃい」
俺の問いに答えるも、どこか一点をじいっと見つめて視線を動かさない仁王を不思議に思い、その視線の先に俺も視線を持っていく。すると、そこには一人のウエイトレスの姿があった。
「あのウエイトレスが気になんの?」
びっくりしたように俺の方を見るなり、仁王は頬を赤らめた。(なんかキモいな) どうやら図星のようだ。
「あの子、可愛いーじゃろ」
もう一度、彼女を見る。いや、普通じゃね?特別可愛くもないし、どこにでもいるような子だ。
「声かけてみれぱいいだろい」
「無理じゃ。恥ずかしい」
「はあ?」
なんなんだ、こいつ。女か。もじもじしやがって。まじキモ。
「すみませーん」
もじもじする仁王に苛立ちを覚え、少し大きめな声で、そのウエイトレスに声をかければ、笑顔でこっちに向かってくる。(笑ったらけっこう可愛いじゃん)
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「あんみつ一つと…後、こいつがアド教えて欲しいって」
「え?」
「ちょ、ブンちゃん!」
きょとんとするウエイトレスに、あたふたする仁王が面白い。
「あーっと…、アドレス教えてください」
いつもは猫背のくせに今はピシッと背筋を伸ばす仁王が可笑しいし、似合わない。少しはにかんで笑った彼女は、持っていたモメ帳にサラサラっとペンを走らせ仁王にそれを破って渡した。
「あんみつ、お一つですね。少々お待ちください」
そう言って厨房に入っていく彼女を、仁王はずっと見つめていた。すると急に、仁王のまわりに花が飛び散っているような…そんな雰囲気というかなんというか。とにかく、すっげぇ喜んで俺のほうに視線をうつす仁王。
「ブンちゃん!俺、どうしよう!ホンマあの子可愛いーナリ!」
こんなにテンションの高い仁王を見たのは、初めてかも知れない。目をキラキラさせて喜ぶ仁王を見てたら、こっちまで嬉しくなった。
2013.05.31