ありがとうございます♪
拙い物ですが
女装×平凡です。
春
それは出会いの季節
薔薇高校へと入学を果たした
何処にでも居る日本男児、吉河太一は入学早々、不似合いな溜息を漏らしていた。
「太一さん!」
「!」
疲れ切った様な顔を浮かべていた太一に、高過ぎず、だが透き通った女性の声が掛かり、ゆっくりと顔を上げると、そこには美少女が立っていた。
その子の名は宮野キリト
太一にとって一つ上の二年生で、学校中の男達の憧れのマドンナだ。
その姿は、美しく、清潔感溢れる身形
その姿は大和撫子!
彼女を狙う数多の男達が彼女の口に敗退してきたと言う汚れのない、まさに崇高の白い花!
「…」
「少し良いかしら太一さん」
そんな崇高の花に呼び出されて舞い上がらない男は居ないだろう…
だが、太一はその男達とは違い嫌な顔を浮かべていた。
一方、キリトは満開の白い花を咲かせた様な笑顔を浮かべていた。
「あっあの…宮野さん!この男と、どういう関係何ですか?」
太一達の様子を見ていたクラスメートの一人が問いかけてきたのに対しキリトは、お淑やかに、問いかけて来た男に笑い返し
「私達?私達は恋人同士ですよ!」
「は?!」
爆弾を投げつけた。
そのキリトの爆弾発言に、クラス中がザワ付く
それに対して、太一は一瞬思考停止したが直ぐに立て直し、慌ててキリトの腕を掴み逃げるように、その場を後にした。
そして、その足で来たのは学校の屋上だった。
屋上に着くと、太一はキリトを睨み付ける。
それに対して平然とした態度でそこに立つキリトに太一は一層機嫌が悪くなる。
「どういうつもりだ!」
「…どういうつもりって何が?」
さっきまで聞いていたキリトの透き通った女性の声は形を潜め、少し掠れた男の声がそこにあった。
「恋人ってやつだ!俺らは昨日、偶然会っただけの関係だし、しっしかも、お前は男だろうが!!」
そう、学校中が、憧れるマドンナは実は女装した男なのだ。
それを昨日、偶然会った時に知ってしまったという関係
だから、それ以下でも以上でもない
ただの秘密を知ってしまったという関係なのだ。
なのに、今日教室での爆弾発言は、どれだけの男を敵に回したことか、考えるだけで太一は目の前が真っ暗になりそうになった。
「ああ、その事。ただ、お前が俺の秘密をバラしていないようだったから、ご褒美に光栄に思いなよ、学校中の憧れの俺と恋人になれたんだから」
確かに、男と知らなかった時の自分だったら、舞い上がっていたかもしれないが、今は相手が男だと知った以上、頼まれても恋人には、なりたくないと思った太一は、反抗的な態度をキリトに向ける。
「ふざけんな!何が悲しゅうて、男と付き合わないといけないんだ!」
「へー断るんだ?」
怒鳴りつける太一に対してキリトは、愉快そうに笑みを浮かべながら太一の側へと近付いていく
それを太一は、警戒しながら後ずさっていく。
だが、次第にフェンスが背中に当たり退路を断たれてしまった。
それに対してキリトは、余裕げに太一の側へと立ち、己の口を太一の耳元へと近づける。
「でも、聞いてあげない♪」
「!」
キリトの言葉に太一は、大きく目を見開きキリトを見る
太一の目に映ったキリトは欣然とした笑みを浮かべていた。
そこに女の面影は無く男そのものの姿だった。
「だって、俺は太一が気に入ったからさ」
「んぐっ!!」
キリトが話し終えると同時に太一の唇はキリトの唇によって塞がれた。
突然の出来事だった為、思考回路が追いつかず太一は身動き一つ取れないまま、キリトの唇は離れていった。
「ごちそうさま♪」
そう言って、キリトは誰もが頬を朱に染めそうな艶笑を浮かべ、その場を後にした。
そして、思考が回復してきた太一は今までの出来事を思い返した瞬間、これでもかと言うほど顔を真っ赤に染め上げ
「なっなっなっな〜何しやがんだぁぁぁー!!」
太一は叫号するが、その声は誰の耳に届くことなく学校の屋上に響き渡った。
そしてその後、太一は学校中の男に睨まれるのであった。
=中央広場=へ