君といた季節

□Act5.『生きてる』
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夢を見た…

悲しい悲しいあの日のことを…

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真夜中、スズメバチは1人領境を歩いていた。

手には武器ではなく小さな白く淡い花の束を持ち、リリィの家より数メートルばかり離れた木の下まで…

そこには真新しいとは言い難いが、手入れの行き届いた小さなお墓が存在していた。

スズメバチは周りに目もくれずそのお墓の前にドカッと座ると、小さな白く淡い花を墓石の前に供える。

そして、黙ったまま…時が過ぎ行くのを感じるかの様にその場に座ったままだ……


真夜中とは言え、深く眠りに着くことのない生き物も存在はする。だが、誰一人として彼に気付く者はいなかった。

それだけ、誰にも気付かれたくない…と言うことなのだろうか……

端から見たらただの小石にしか見えない墓石を、ただ見詰めているだけなのに…

彼はとても悲しい瞳をしていた。



「………」



静かに…ただ石を見詰めて…
それだけなのにも関わらず深い悲しみを帯びた瞳は次第に伏せられ…長い時間が過ぎたらしく、いつの間にか夜明けを迎えていたらしい。



「…もう朝か…」



立ち上がる訳でもなく、振り返り飛び立つ鳥を見詰め朝日を確認し時間と自分の行動を改めて認識する……


どれだけ石を見ていたのだろう……と。





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