金星

□小話
1ページ/1ページ






「・・・ねぇ、ギター弾いて楽しい?」



ふてくされたような顔をして、彼女は聞いた。



「・・・はぁ?・・・なんだよいきなり」



「なんとなく。聞いてみようと思っただけ」



「・・・ふぅん・・・」




彼は再びギターを弾きだす。




「ナカジは、生き急ぎすぎだよ」




彼は弦から指を外さずに彼女を見た。






「先へ先へと急いで、疲れてる」



彼女はナカジの指を見る。


彼の指の皮は練習のせいか固く厚くなっていた。
そして、先程まで弾いていたせいか赤味をもっていた。




「結果だけを優先しすぎなんだよ。過程も大切だよ?」




「・・・・・・」





「ずばり!ナカジは生き急ぎすぎてギターを楽しんでない!!」



「・・・!」



彼は、ハッとする。




「何より今を楽しまないと」




彼女は微笑む。


彼は被っていた学生帽を深く被った。




「・・・お前に気付かされるなんて、俺も落ちたもんだ」




「失礼な」






二人は笑う。







「まぁ、青春をエンジョイしようよ青年!」



「お前となんて何があるか分かんねぇけどな」



「分かんない未来だから良いんでしょ!」




二人は笑いあい、拳をぶつけあった。




「お前との青春も悪くはないかもな・・・」





夕焼け色は橙だった。












end


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ