Dream 1

□行く末
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「ねぇ、私とヤりたい?」


放課後の教室。
窓際に凭れ、夕陽を背中に受けてうっすら笑いながら問われる。
どこか色っぽく、妖しげな姿。
俺はそんな姿に不覚にも目を奪われた。


「………、」
「いつも私の事見てるでしょ」


くすりと一度笑われて、ゆっくり身体を起す。
ぞわり、と全身の毛が逆立った。

…そうだ。
俺はアンタを見てた。
初めて会った時から、アンタだけを見てた。


「……俺は ただ…、」
「ただ?」


言葉がうまく出てこない。
喉がカラカラに渇いて、唇が乾いて。
俯いて、足元だけを盗み見る。

ざわざわと頭の中が煩い。
どくどくと刻む心臓の音だって、耳障りで仕方がなかった。


「私が好きなんでしょ?」
「ー……っ、」


ドクン、と一度大きく心臓が跳ねた。
その言葉に、反射的に顔を上げると、アンタは満足そうな、見下したような表情をしていた。

ー俺はアンタを好きなんかじゃない。
俺は、アンタなんか好きじゃない。
俺は。


「私とやりたいなら、」


ゆっくり動く綺麗な形の唇を見つめながら、きつく唇を噛む。
強く握り締めた掌に、爪が食い込んで痛かった。

ー俺は、ただ見たかったんだ。
アンタの顔を。姿を。


「私をその気にさせてみなさいよ」


ーただ、見たかったんだ。
アンタのその顔が、苦痛に歪むのを。
泣いて、啼いて、俺に懇願してくる姿を。

こくり、と唾を飲み込む。
無意識に足が動いた。
鉄の足枷をつけられているように重たい足が、ゆっくりと、しかし確実にアンタとの距離を縮めていく。


「…どうなっても、知りませんよ」


甘い香りが鼻を掠め、温かな体温を腕の中に感じた。
すぐ近くで聞こえる、濡れた吐息。
滑らかな肌に手を這わせ、口付ける度に跳ねる身体。

ざわざわと心が騒いだ。
身体が熱くて、心臓の音が煩くて。
逸る身体に、抑えが効かなかった。


「ーアンタが、 悪いんだからな…」


ー俺は、見たかっただけなんだ。
アンタが俺に屈服する姿を。
俺に、怯えた表情を。


「、日吉、 んっ」
「ー黙れよ、」


ー俺は、アンタの目が、俺だけを写すのを待ってるんだ。
俺だけを見て、俺だけを想って、俺だけを感じるアンタを。


「ーあっ、 私の事、好き…?、ッ」


ー俺は、ずっとアンタを俺だけのものにしたかったんだ。
俺だけを見るようにしたかったんだ。


「、 好きじゃ、ありませんよ」


ー俺は、アンタが嫌いだ。








fin.
2007.7.26


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