苗の狂乱。


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「ひとりしか、通れないの?」
「ああ」
「じゃあ、アッシュが通ればいい」
「は?」
俺は耳を疑った。
真逆ここまではっきりと言い切られるとは思ってもみなかったから、つい間の抜けた声を出してしまった。
だがそんな感情はどこかへ流され、代わりに沸々と怒りではない何かが湧いて来た。
「何故」
「何?」
何故こいつはこれ程にまで生きようとしない?
何故お前は死に急ぐ必要がある?
今更気付いても遅い、溢れんばかりの感情を押さえ込み、自分の生命よりも己が恋した奴に生きてほしかった。だから今だってお前を生かせようとしているのに。
「……………」
「アッシュ、あのさ………あっ」
「レプリカ?」

「なんでもない!ほら、早く行けよっ」
「だがお前が……」
また討論に持ち込まれそうだと判断しただろうルークは、いち早く超振動を発動させた。やがていくら何をしたところで開くことのなかった扉が、意図も簡単に、だが重々しく開いた。
それとほぼ同時に反対側の扉から、レプリカ兵が群がって来る。
それを見た途端、矢張り自分が残ろうと決意した。
だがいざことを言い終わる前に、俺はルークに張り飛ばされていた。
扉の外に手をつき、相手を睨む為に顔を上げたが、それも一瞬のこと。驚愕を表すことさえも忘れさせた。
何故ならばルークは、己の焔の色とは少し違う淡い光を放つ左手が徐々に霞掛かっていく様を見てしまったから。
「……っ」
「あーあ、最後の最後で見付かっちゃった」
「どういうつもりだ!?」
「どうって、見た通りだろ?俺の体は乖離し掛けている。唯それだけだ」
「な、に………?」
¨かいり¨?
聞きたくない。
知りたくない。

体が拒否を示す。
言葉が遠く感じる。
目の前がぐらついた気がした。
 

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