太陽

□未来
1ページ/1ページ




幼馴染が泣いた



 彼が最後に泣いたのは十四年前。当時十三歳だった彼の両親が殺された時だ。犯人はまだ捕まっていない。あの時の事は鮮明に覚えている。心がザワザワする、嫌な雨が降っていた。学校から彼の家に一緒に行って、強盗に刺されて亡くなった両親を見た時の彼の慟哭を、あの叫びを、忘れることなどできない。
 高校を卒業する時、彼はひとつの誓いを立てた。
「犯人は、警察官になって自分で見つける。ただの警察官になるんじゃ駄目だ。誰も犠牲にしない」と。
 彼には、本当にそうなって欲しかった。半面、諦めてもいた。だから、確固とした目標も夢も持っていなかった僕は、それを見届けようと思ったんだ。

 彼の夢は半分叶った。先輩には目をかけられ、後輩には慕われる、いい刑事だった。だが、もう半分。より大切だったはずの誓いを破ってしまったらしい。
 彼をよく思っていない同僚が、彼の部下に濡れ衣を着せて免職になる様に手を回したそうだ。その部下は免職を言い渡された直後、ビルから飛び降りた。直接彼が何かしたわけじゃない。それでも彼は、自分の失策だと、守れなかったと泣いた。
 
かなり難しい目標だとは思っていた。
それは当然だ。清濁併せ呑んでの社会人。そう頻繁に起こるわけではないけれど、この国全体で見たらきっと珍しいことでもないだろう。
いつか破らざるを得なくなる誓いだと。
そう思っていたはずなのに、十四年ぶりの涙に胸が痛んだ。



僕は、もしかしたら。
もしかしたら、本当に訪れて欲しかったのかもしれない。

彼が望んだ彼の未来に。
僕が望んだ彼の未来に。






.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ