太陽

□ひだまり
1ページ/1ページ




  夏

貴方がいなくなってから、
もう随分経ちましたね。
僕はまだ、受け入れることができないけれど。
だから、とうに受信するひとのいなくなったアドレスを携帯電話から削除できない。
だから、貴方がそこで眠っていると知っているのに逢いには行けない。



  秋

『もうすぐ、帰れそうです』
 送信
《MAIL ERROR》
何度も何度も繰り返した動作。
もう、指が覚えてしまったくらいに。
わかっているはずなのに、やめられないのは、認めてしまうのが怖いから。
やめなければ、認めさえしなければ、また、貴方に会えるような気がするんです。
僕が認識しているセカイが変わってしまうのが、怖い。



  冬

本当に二度と会えないんですか?
もう、二度と笑わないんですか?
絶対に帰っては来ないんですか?
僕は諦めるべきなんでしょうか?
誰も、答えをくれはしませんね。



  春

眩しく輝く夏が過ぎ、
稔り豊かな秋が来て、
凍る寒さの冬を越え、
また、春がきました。
光と喜びに満ちた季節。
無数の命が芽吹く季節。
貴方が一番好きだと言った季節。
綺麗な貴方が汚れた僕を、受け入れると言ってくれた季節。
ずいぶん待たせて、やっと出した答えは、結局伝えられなかった。
今なら、きっと言えるのに。

さすがにもう、理解しています。
どれだけ願っても、この広い大空のような貴方は戻ってこないと。

正直、貴方のいないセカイなんて見ていたくない。
でも、後を追ったところできっと貴方は喜ばない。
だから僕は、生きましょう。

貴方を忘れないままで、どこまで遠くへ行けるのでしょうか。
全てを忘れずに、他の誰かを想うことができるのでしょうか。
僕はまた、いつかどこかで出会うことができるのでしょうか



優しく、あたたかく、懐かしい、
そう、まるで。







ひだまりのような、ひと










.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ