□34話目
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大分夜も更け、それぞれが与えられた自室に戻る頃、獄寺は一人海岸を歩いていた。
夕食時に飲んだアルコールがまだ身体に残っており、普段なら冷たいと感じる深夜の潮風が丁度よかった。


(……静かだな…)


くわえていたタバコを棄て、新しいタバコを取り出そうとした時、ふと、視界の隅に何かが映った。
不審に思い目を凝らすと、それは砂浜に寝転がる由衣だった。



「……何してんだ?」

『獄寺さん…』


ぼんやりと夜空を見上げていた目を獄寺に向ける。
お互いに((何故こんなところに…))と言った感じに暫し見つめ合ったあと、一つため息を吐いて獄寺がもう一度聞いた。


「何してんだよ」

『………天体観測…とか?』


望遠鏡も何もありませんけど、と言ってクスクス笑う由衣に眉を寄せる。


「お前…海嫌いじゃなかったのかよ…」


昼間由衣が言った言葉を思い出し、少しゾクリとする。

 
『嫌いですよ。人間ではない人達が集まって来ますし』

「!!………その…大、丈夫なの…か?」

『声震えてますよ』

「っんな訳ねぇだろ!!!!」


ムキになる獄寺を見てまたクスクスと笑いだす。


「おい!!///」

『すみません。大丈夫ですよ。寄って来ても、何もしませんから』

「……どう言う事だ?」

『寂しいだけなんです…彼らも…』

「………」

『…本来自分が存在しない世界にいる…でも、どうしたらいいか分からなくて…ただ、その場所に留まっている…』


由衣はそう呟くと目を閉じた。
獄寺は、心臓を抉られるような気持ちでそれを聞いていた。


 
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