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□54話目
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翌朝
まだ陽も上りきらない時間に、由衣はそっと屋敷を抜け出した
(……誰も…いない、ね)
先に荷物の入った鞄を塀の外に投げ、次にとん、と地面を蹴って塀に登った。
キョロキョロと辺りを見渡し、人のいないのを確認して塀を降りると、鞄を持ち今まで世話になった大きな屋敷を見上げた
(マフィアなんかと馴れ合うつもり、全然なかったのに…)
警察である自分がこんなにまで親密になってしまった事に、由衣は少し戸惑う。
この屋敷の住人や、その仲間達の顔を一人一人思い出すと、キュッと胸が苦しくなるようだった
(遅ければ遅いほど、別れは辛くなる…だから…)
『今まで、本当に有難うございました…』
深々と頭を下げてまだ寝ているだろう人達に向かって礼を言う
そして、由衣は屋敷に背を向け、ゆっくりと歩き出した
途中、一度だけ屋敷を振り返る
『さようなら』