□55話目
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その内に注文したコーヒーとクロワッサンがきた。
それを食べ終え席を立とうとすると、見計らっていたかのように男が近づいてきた

「───、──!」

『あ…え?』


恐らくナンパだろう。
しかし早口でまくし立てられて聞き取れない。
男の横をすり抜けると、レジに金だけ置いて半ば走るように店を出た


…ドンッ

『っ!!』

急いでいたせいで、入り口で男とぶつかった


『す、すみませんっ……じゃなくて、えっと…』

イタリア語で詫びは…と由衣が思い出そうとした。
しかし


「いえ、こちらこそ」

『!!』

返ってきたのは日本語。
流暢な発音にもう綱吉達に見つかったのかと、ぶつかった相手の顔を見上げる


『っ…!!』

その瞬間、首筋にプツリと針の刺さるような感触がして、由衣は声を上げる間もなく気を失った

倒れ込んだ由衣を抱き留めた男が、周りに居た、恐らく由衣の首に針を刺しただろう男に目配せをすると、無言で側に留まっていた車に押し込めた

そしてそのまま、車は走り去って行った




「……あれは…」

「どうしたボス」

「…いや。なんでもねぇ」

「じゃあ行くぜ」

「ああ…」


ツヅク
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