小説

□追憶
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森の中。

風がそよぎ、緑が流れる。




美しい…美しい、世界。



かつて(という言い方は正確ではないけれど)ここが闇に包まれた世界だったなんて、誰が信じるでしょう。

でも、この世界を巡る貴方達の闘いは、確かに存在した。
ほとんど誰も知らないような、そんな言い伝えになってしまったけれど。



私は、覚えている。


――貴方達が、成し遂げた事を。






*追憶*













「…よく眠る事。」

愛しい我が子を腕に抱き、私は目を細めていた。
この子の頭を撫でていると、自分にもそんな時代があった事を思い出す。

同時に、思い浮かぶのは決まって彼らの事。






私がこんな風に親に抱き締められていた頃の世界は、今私が我が子を抱き締めているような、光に満ち溢れた世界では無かった。


暗い世界。

私は両親に愛されて幸せだったけど、その世界には希望は無かった(今思えば、そこで正しい心を忘れずにいた私の両親は、本当に立派な人達だったのだろう)。



両親から自立しても、守るべきものは既に無かった。


時は、壊れていた。


森は、死んでいるも同然だった。





…私は、何の為にここにいるのだろう。
漠然と自分の前に広がる、人生。
その全てがこのまま過ぎるのかと思うと、耐えられなかった。





…そんな時だ。
1人の人間と、その相棒のジュプトルに出会ったのは。











――『貴方が、セレビィ?』


――『頼みがある。力を、貸して欲しい。』


――『過去に戻って、変えたい事があるの。』











――『世界に、光を取り戻したいんだ。』


















…初めて聞いた一言だった。

思わず泣きそうになったのを覚えている。
迷いは無かった。
私は、彼女達に協力する事を決めた。
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