「あっちゃ〜。本降りだわね」
マンション近くの本屋からちょっと遠くの本屋に足を伸ばしたのが運の尽き。
雨には降られるわ
欲しい本は手に入らないわで、散々。
湿った服が張り付いて、何とも気持ちが悪い。ここまで濡れてしまえば、マンションまで走った方が良い気がして。
雨宿りの軒下から走り出した。
「……あら?」
電柱の影に人影を見付けて。
立ち止まる。
一瞬、酔っ払いだと思ったけど。
…若い男の子だわ?
「……君?大丈夫?」
頭の何処かで、関わらない方が良い。そう囁くけど、元来のお節介な気質だ。無視して帰ったら気になって眠れないだろう。
銀髪の綺麗な男の子だった。壁にもたれてグッたりとしている。
あちこちに擦り傷や内出血の後がある。薄い唇は切れて血が滲んでいた。
喧嘩……ね。
この程度の傷なら日常見慣れている。
濡れ鼠になった体をまさぐる。
大した傷は見当たらない。
頭でも強打したのかしら?
雨で張り付いた髪を払い、指で頭皮に触れる。
「……やだ。すごい熱」
少年がグッタリと意識がないのは、高熱のためらしい。
その日。
あたしは
仔猫
を拾った。