少年の細い腕を持ち上げて。うっ血の跡に湿布を貼る。

午前5時。
カーテンの隙間から、明け始めた世界が見えた。

夜更かしや徹夜はなれっこになっていた。まして、今日の相手はむさいおじ様ではなく、お肌ツルツル美少年。
心も弾むってものだわ。


「ん〜」

と大きな伸びをして、カチカチになった肩を拳で叩く。


雨も止んだみたいね。今日こそは、もう一足延ばして、昨日買い損なった本を探そうかしら?



「……お前ぇ。誰だ?」
背後から低い声。
頸動脈には冷たい、刃物の感覚。
……湿布を切ったナイフね。

気を弛めていたとは言え、このあたしが…こんな子供に不覚を取るとは。
流石は次期、総長。
褒めるべきかしら?


「女相手に…そんなモノ振り回さないと何も出来ないのかしら?……」
「なっ」
「日番谷冬獅郎君は?」
「!?」
「あたしが、敵に見える?」

少年は戸惑いながらナイフを下ろした。

振り返ると、意志のある強い瞳と視線が交差した。
あたしのパジャマを上だけ着せられて、華奢な体にはそれでもブカブカで儚げで、頼りなさげだけど。



の眼をしていた。

意志のある
意志の通った
強い瞳。


「すまねぇ」


体に似合わない、低い声も。
綺麗な瞳も。
整った顔も。


全てが好ましい。
それが、

あたしが日番谷の坊っちゃん
冬獅郎
を見て感じた事だった。

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ