新小説軍

□きっとそんな奴だから。
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「おーい、風丸!!」
「!円堂。」

放課後、部活も終わって個々で帰宅準備をしている最中。
俺は突然、円堂に声をかけられた。
名前を呼ばれる事には、慣れている。
何せ幼なじみだから。

でも、その時は驚いて肩が跳ねた。
丁度円堂の事を考えてる時に話し掛けられたんだから、仕方ないだろう。
どうやって円堂と一緒に帰るかを悩んでいたんだ。
理由は簡単。
俺が円堂の事を好きだから。

「明日の朝練なんだけどさ…」
「あぁ、どうした?」

勿論、その[好き]って感覚は友達としてではなくもう一つ上。
本来なら男は女に寄せる感情。

「俺はそれで良いと思う。」
「そっか。よし、風丸がそういうなら、これにするかな!」
「おいおい、それで良いのか?」

問題は色々ある。俺達は男同士だとか、円堂が鈍感だとか…。
まぁ、男同士の恋愛や結婚なんてこの国が認めてないだけで個人の自由だと思ってるし問題じゃない。

それよりも一番の問題を忘れていた。
と言うより今は考えたくなかったんだ。その問題は俺の幸せな時間を壊す。

「円堂、ちょっと良いか?」

声をかけてきたのは豪炎寺。
俺に一切目もくれず、円堂だけを見てる……俺と同じ考えの奴。
だから邪魔をしてくる…。
瞬間苛立つ。

それはきっと自分に余裕がないから。
円堂を取られると思っているから。
行動を起こさなければ負ける。

「なぁ、円堂。今日一緒に帰らないか?スポーツショップ寄りたいんだ。」
「あ、良いぜ!俺も行きたかったんだ。」

ニカッと笑う円堂は眩しい。

「俺も良いか?」

お前はいいんだけどな。
だが、俺はそんなに器が小さいわけじゃない。
堂々と言い放ってやる。

「あぁ、勿論だ。」

小さな火花が俺達の間だけで散った。
円堂は全く気付かずに

「よし!じゃ他の奴にも声掛けてくる!」

そう言って部室を飛び出す。
………全く円堂らしいよ。
残された俺と豪炎寺は同時に溜め息。
こんな時にだけ気が合う。
交わした視線に少し笑みが零れた。

「大変だな。」
「お互い様、だろ?」
「そうか?」

お互い様と言われても動揺しない。
したら付け込まれそうだからな。
戻ってきた円堂と他の部員を見て、苦笑してしまった。
ほぼ全員がいる。
本当に好かれる奴なんだよな。

ライバルが多い…。
でも、なんだかんだでこんな生活が
楽しい。

「行くぞ、風丸!」
「あぁ今行く!」

だから、こんな生活が今はまだ
続けば良いと思ってしまう。
矛盾しているけど、やっぱり今はまだ
この生活が続くのを願うばかりだ。



END
 

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