short story

□陣風ミニマム
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 郁にとって最も、そして大きな悩み。それが、この151という身長だった。この身長はたとえ中学1年だとしても男には低いに部類するだろう。身長と寿命だけは思い通りにならないと聞くが、それが自分ならば実感できる。



――それは郁が中学入学直後のこと―――

 入学してから間もなくで行われたの身体測定。出された結果を見て、浮かない顔をしている郁がそこにあった。

「郁ー、身長どれだけ伸びた?」

 そう、この時期だと伸びているだろうと期待しながら測定した郁にのしかかる兄・(てつ)の声。

「・・・0,2・・・・・」

 それに不満足そうに返した郁は、測定結果の書かれた紙をぐしゃぐしゃに握りつぶす。


 なんで俺はこうも身長が伸びないんだ

 兄貴は伸びているのに、何で俺はここまで伸びていないのか


 焦りが心を掻き乱す。今になって思えば、ここ数年身長に変化がない。

 何かの病気なんじゃないのか・・・・・そんな悪い考えが逃げ道になってしまう。そうぐるぐると思考を巡らせていた矢先、ポンと頭に手を置かれる衝撃に、郁は顔を上げた。

「大丈夫、そんな焦らなくても自然に伸びるさ」

「・・・・・・・・」

 郁を宥めるように紡がれた徹の言葉。

 子供扱いされたのが不服ではあったが、殆どの同級生の男子にはバカにされたことを徹は決してバカにはしなかった。その言葉に郁は、何も言い返すこともできなかったのだ。

 むしろ、もう伸びないかもしれないと不安に押し潰されそうだったのを助けてくれた。



 それがどんなささいなことだとしても、郁には嬉しかったのだ。


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