short story

□アイカタチ
1ページ/13ページ


­  ざわざわとざわめきの起こる道路。そこに転がっているのは使い古された黒いランドセル。

­  トラックはガードレールにぶつかり停止、その前方は何かにぶつかったかのように凹んでいた。

「やだ・・・和也、和也っ!!」

­  そこには今にも泣き出しそうな女の子がいた。

­  その女の子は和也と呼んだ、幼馴染で同級生の男の子に近づこうとするも、大人の手にそれは制される。近づきたくとも、近づけなかった。子供の力ではどうしようもない。

「和也っ」

­  名前を呼ばれても反応を示さない男の子。意識を失っているのか、息すら絶えてしまったのか、ぴくりとも動かない。

­  彼がトラックと衝突でもしたのだろう・・・。横たわる男の子の周りには血溜まりができている。

­  そしてそれは頭の傷よりも、脚の傷の方が痛々しげに映った。

「和也ぁぁぁっ!!」

­  涙を両目いっぱいに浮かべて、泣き叫ぶ女の子。その高い声だけが、野次馬のようにざわざわとたつ音の中響く。

­  遠くからサイレンを鳴らす、救急車。人垣を掻きわけて、それはようやく到着した。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ