short story
□恋色模様
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あたし、柊木奈菜。
「俺、奈菜が好きだ」
高校はつい先日、入学したばかりだった。学してから1週間がやっと経過した金曜日。部活が決まったのか、早々と無人に等しくなるクラス。
殆ど人は残ってなくて、いるのはあたしと幼馴染の立本優だけだった。その優があたしにこう言ったんだ。
「え・・・ゆ、優?」
あたしはびっくりして、一瞬何を言われているのかわからなかった。兄妹同然で育ったし、幼稚園の頃から一緒。小学校も中学校も当然のように一緒にいたんだ。進学した高校まで一緒で、クラスも一緒。
そりゃ小学生の時は冷やかしもいたけど、中学にあがればそれが当たり前にみんな映ったんだと思う。いつしか冷やかしは、優やあたしと仲がいい友達だけでおさまってた。
それに意外だったんだ。まさか、優があたしのことこう思ってくれているなんて・・・。
「奈菜が好きなんだ、子供の頃から」
優は再び真っ赤になりながらその言葉をあたしに言った。窓越しに差す、橙色の夕日。それに負けないくらい優の顔は真っ赤だった。
返事は?
そんなの決まってる。
「あ、あたしも優が好きだよ?」
好きだった。子供の頃から。【幼馴染】っていう存在が、逆に近過ぎて言えなかったんだもの。
気が付いた時には、あたしは優に抱きしめられてた。その腕はがっしりしてたし、強かった。今さらだけど、並んでいた背は優が追い抜いてて、あたしが見上げるくらい。
女のあたしと、男の優の違い。ここで改めてわかった気がしたの。
ここで長かった片想いは終わったんだよね?
これからあたしたち、両想いなんだよね?
そう自分に何度か聞いた。優にも何度も聞いた。
優は照れたように顔を逸らしながら
「そうだよっ」
そうつっけんどんに返す。
優のこういうところは、高校生になった今でも子供っぽいって思う。なんかあたしにしか、見せたことないみたいだけど。