short story

□続・天使の証
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「ミカ様、本当にごめんなさいっ」

 謝ると同時に、ルナは深く頭を下げる。提出を言われていたプリントを取り戻した時間帯が日暮れだということもあり、翌日の提出になってしまっていたのだ。

 言い訳ともとれる理由を全て聞き終わったミカは、くすりと優しい笑みをそこに灯す。

「仕方がないですね、場合が場合ですし、今回は大目にみましょう」

 ミカのそんな一言に、ルナはぱぁっと顔を綻ばせた。隣にいる、確実に付き合わされたユウキだけはどこか不満そうな顔をしていたが・・・・・。

「ユウキ、ルナを少し借りますよ?」

「え・・・ミカ様?」

 思いがけないミカの言葉に、ルナは驚きを隠せていないようだった。ぱくぱくと動かされた口からは、音を孕まない空気だけが、行き来している。

「何でわざわざ俺に許可とるんだよ、好きにすりゃいいじゃねぇか」

 自分に何の関係がある?

 そう言いたげなユウキの表情。それは、ただでさえ付き合わされてうんざりしているのにと、物語っているようにもとれた。

「男たるもの、女性の付き合いには最後までお従いするものですよ」

「はぁ?」

 もうこの時点でユウキは不機嫌を丸出しにしていた。子供っぽいとも思える態度であるがが、そうでもない。

 ユウキ自身、ミカが何を言わんとしているかの理解は出来たが、この必要以上に回りくどい言い方が、正直気に食わないのだ。

その感情を表に出すようにして、ユウキはミカを睨みつけた。

 ルナにしてみても、自身が他人より劣るのは今に始まったことではないので、今さら何かを忠告されるわけでもない。だからか、逆にミカにこうして呼ばれることに、躊躇いのようなものが浮かび上がっていた。

 幾度かユウキとミカの間で視線を泳がせると、そっと下から覗きこむようにユウキの顔を見上げる。幼馴染でなくても不機嫌であることがわかるくらい、ユウキの表情ははっきりとしていた。

 ルナがゴクンと小さく唾を呑みこめば、自分を落ち着かせるように1つ深呼吸をすると

「あ、あの・・・ユウちゃん・・・・・ちょっと待っててもらっていい?」

 そうおずおずと言葉をユウキに切り出す。遠慮がちに、なお相手を気遣い機嫌を窺うようにするルナ。

 ユウキはルナのこういったはっきりしない態度が1番嫌いであったが、原因が己にあることが理解できていないほど馬鹿でもない。むしろ昔からの付き合いだ、慣れている。

 結局ユウキは大きなため息を吐き出し、次には「ああ」とぶっきらぼうな返事をルナに返した。ここまで付き合っている以上、断る理由もない。

それにミカにああ言われたら、ここでルナを置いて帰ることが逆に癪だった。

「ルナ・・・お許しもでたことですし、行きますよ?」

「あ、はいミカ様。ユウちゃん、ごめんね?」

 先に歩くミカの後を、ぱたぱたと追いかけるルナの姿を、ユウキはただ黙って見送った。


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