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□spiritual paine
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死武専校舎の一角に位置するお泊まり室。
静まり返ったその部屋は、堅固な扉で閉ざされ、ただ静寂を守るだけ。
レンガで造られた壁は温もりなどあるはずもなく、無機質特有の冷気を放ち何者も寄せ付けない。
夜空には、大きく口を開けて笑う三日月が浮かんでいる。
三日月はお泊まり室の小さな窓をめがけて光を放ち、光は窓枠にそって型どられながら静かに冷えきった床に注がれていた。
この冷えきった部屋の住人は、部屋の隅に枕を抱いてうずくまっていた。
言葉を発することはなく、まるで闇と同化するように息を潜めている。
「おぃ、クロナ!!おめぇ-はよぉ!何でいつもいつも部屋の隅っこにいるんだよ!?苔が生えちまうぞ!!」
クロナの中の住人、ラグナロクは背後からスッと現れてはクロナの頭をポカポカと叩き遊んでいる。
しかし、いつもなら多少なりとも反論するクロナも今日は何の反応も示さなかった。
枕を抱いたまま、ただ一点を見つめている。
「おぃ、聞いてんのか!?…くそぉ!!クロナのくせにシカトかよ!?いい身分になったもんだなぁ!」
「……」
ラグナロクは騒々しいまでにクロナに噛みつくが、クロナは何事もなかったかのように体勢を崩さなかった。