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□大切なのは…@
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吐く息はとても白く、肌を撫でる空気に痛みすら感じる。

以前まで青々と生い茂っていた木々は、茶色く色づき、そして現在は白銀の冬化粧をほどこしていた。

シンシンと降り積もる雪の結晶はキラキラと光り、真冬の厳しさを静かに物語っている。

志なかばにした小さな一匹のカエルは、凍てつく真冬空の下、冬眠すべきかどうか悩んでいるのだった――…



そして、ここにも悩める子羊がもう一人…


「はぁ―…」

マカは吐息で両手を温めるわけでもなく、ただただ長い溜め息をもらした。
時は放課後、他の学生はみな帰宅したというのに、マカだけは机に肘をつき暗い表情をしていた。
いつものヤル気と負けん気は微塵も感じられない。
マカは、また長く湿った溜め息を洩らした。

「マカちゃん。」

そんな屍のようなマカに隣から優しく声をかけたのはブラック☆スターのパートナーである椿であった。

「……あれ?椿ちゃん。帰ったんじゃなかったの?」

「うん…。最近マカちゃん何だか落ち込んでるみたいだったから、心配で戻ってきちゃった。…マカちゃん、何か悩み事でもあるの?…頼りないかも知れないけど、私でよかったら話聴くよ?」

椿はマカの様子に心配し、一度離れた学校に戻ってきたのだった。
マカに対し優しい言葉を投げ掛ける。

「(……何で、こんなに優しいんだろ…椿ちゃん。)」

マカは椿の優しさを噛みしめ、心にかかったスモークが少し薄らいだのを感じた。
そして、ゆっくり胸の内を話し出した。

「…私ね、ソウルと付き合って3ヶ月経つんだぁ。付き合ったって言っても、今までの延長って感じで……。ソウル、私に手出してこないんだぁ。それどころかチョッカイも出してこない。…………………私って、本当に魅力ないんだね………私ソウルに嫌われちゃう…!!!」

マカは瞳一杯に涙を溜め、流すもんかと必死に堪えている。
そして、自分の胸と椿の胸を比べては、その違いにまた深い溜め息を洩らした。
そんなマカを目の当たりにした椿は、背中に手をそっとあてマカを宥めながら話し出した。

「…マカちゃん。辛い思いをしてたのね…」

その言葉を聞いたマカは、必死で堪えていた涙をポロポロと溢した。
椿はマカの背中に置いた手でトン…トン…とリズムを刻みながら話を続ける。

「…マカちゃん。マカちゃんは本当に自分には魅力がないって思ってるの?……私はそうは思わないよ。マカちゃんはきっと“魅力=体型”になってるのね。確かに、その見方も一理あると思うわ。…でも、本当に魅力ってそれだけなのかな?私は、マカちゃんは十分魅力的だと思うわ。マカちゃんのヤル気と負けん気は私に元気と勇気を与えてくれるんだよ。」

椿は優しく微笑んだ。
そして、最も大切な言葉をマカに贈った。

「…大切なのは見た目じゃない。…心だよ。」

「……うん…椿ちゃんありがと。私、元気出た!!」

椿の言葉を聴いたマカは涙をゴシゴシと拭き取り、何だかとてもスッキリとした表情であった。
椿はマカの表情にホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、どこからともなく聞き慣れた大音量の声が聞こえた。

「…マカァァァ!!!そんなことでへこたれるなんてお前らしくねぇな!!…お前の本気見せてみろ!!!ヤれ!!ヤってしまうのだぁ!!!」

「ちょ…ちょっと!!ブラック☆スター…!!」

どこからともなくブラック☆スターが現れた。
驚きを隠せないマカと椿であったが、そんな二人などお構い無く、自分の感情に任せて叫んだ。

「ちょっとブラック☆スター!!?女の子に言うセリフじゃないんじゃないの!?」

完全に復活したマカは、羞じらいのないブラック☆スターを睨む。
しかし、直ぐに表情は一変し笑顔になった。
そして、心から『ありがと…』と感謝の気持ちを述べるのであった。



続く
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