短編

□飢えた毒の焦り
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最近、アカデミア内に女性がオベリスク・フォースのデュエル戦士に襲われるという報告が相次いでいる。

僕はプロフェッサーからの命令でそれの調査及び、見つけ次第処分を一任された。


以前の僕なら『面倒くさい』という理由でデニスに丸投げしていた。
だが、そうはいかない。



マヤが心配だ。僕のマヤに汚ならしいモブフォースの魔の手が伸びてきたら……。
想像するだけで苛立つ。カード化するだけじゃ許してあげない。



最近はオベリスク・フォースを団体で構成させてプロフェッサーが任務の派遣を命令してアカデミア内には男を最小限の人数に留めている。
大体アカデミアにいる男はプロフェッサー含め、僕とデニスと勲章おじさんことバレットくらいだ。



女性デュエリストは可能な限り、アカデミア内に留めておくようになった。簡単に言えば『自室待機』だ、マヤもおそらく自室待機に徹しているだろう。




そう言えば、以前のモブフォースの情事って『襲われてる』ってカテゴリーに嵌まるのかな?
でも、女性も楽しんでいた気もしないでもない。
……以前のコレは無視しよう。
僕だってマヤとの情事を楽しんだんだから。




「嗚呼、マヤが心配だ!!僕の部屋で24時間365日四六時中、マヤとずっとずっとずっとずっと!!イチャイチャと同棲したい!!」



僕はデュエルディスクにマヤの居場所を点滅する発信器を発動させた。ついでに盗聴機能も。

大丈夫かな大丈夫かな……。何もないままデッキ調整してて欲しいな。




『や、やめて……!!』

「……え?」



何かマヤが泣きそうな声が聞こえたんだけど。
へぇ、マヤの泣きそうな声ってこんなにそそるもんなんだ……って違う!!
何で泣きそうな声なの!?僕なんかした!?不法侵入は君のいないときにやってるから安心してよ!!




『何でよ。俺ら、プロフェッサーからのハードな任務で疲れてんのよ』

『それに溜まってるしさぁ』

『いいでしょ?君みたいな超平凡な子を俺らが相手するんだから』



は!?
何で他の男が複数で寄ってたかって……。
ま、まさか……最近女性が襲われるという報告、今まさにその状態!?




『い、いやぁっ!!やめてっ!!た、助けて、ユーリ様……ッ!!』



デュエルディスクの盗聴機能をオンにした時、マヤのリアルタイムの声が聞こえた。

鎚るような、助けを求める声。

マヤが、僕にだけ、助けを求めている。



『へへっ、平凡な顔にしちゃあイイ身体だぜ』



……よし、事案発生。
あんのクソヤロウのモブフォースめ!!僕のマヤに手を出しやがって!!どこにいる!?
何!?マヤの部屋だと!?





「……バレット以上の永久大戦犯、はっけーん。直ちに処分するよ」




モブのクソフォースがあああああっ!!僕ですらマヤの部屋に正式に入ったことないっつーのに!!

確かに僕はマヤの部屋に不法侵入しては使用済みのお風呂に入ったり、ベッドやシーツの臭いを嗅いでハァハァしていたけども!!
今度は境界の向こうに行っちゃいけない、洗濯前の服やら下着やらをくんかくんかしたいもん!!
もう真人間だとか変態だとかどうでもいい!!





『つーかこいつ、来るわけねぇ、薄気味悪い奴の名前呼んだって……』

「薄気味悪い奴が……来ないと思った?」

「え……なっ!?こいつ、何で……っ!?」



僕はマヤのために超瞬間移動で彼女の部屋にたどり着いた。
僕の顔がちょっとした顔芸になってるくらいのゲス顔になってるのはこの際、仕方ないことにしよう。




「ゆ、ユーリ……様ッ……!!」



マヤは大人しく自室待機していたようだ。
部屋のドアが、プロフェッサーに報告せずに任務から帰ってきたモブフォースに壊されてしまい、複数の男の汚い手に今まさに犯されそうで、彼女の服がビリビリになって破けていた。
抵抗したのか、マヤの頬や手首が真っ赤に腫れ上がっていることからこのクソフォースらが暴力をふるったことが見えていた。





「な、何でここに……!?」

「僕のマヤを狙うなんて……度胸があるんだか死ににきたんだか……。
まぁ、僕は許さないけど」

「や、やめ……ッ!!うわあああああああっ!!」




僕はデュエルディスクを展開し、紫の光をクソフォースに向けて発光すると、モブフォースの気配がなくなった代わりに彼らの絵が記載されているカードがパラパラとマヤの部屋の床に散らばった。

僕はそれを全部拾った。




「マヤ、こいつらどうしたい?」

「か、顔も……見たくないです」

「うん。じゃ、窓から捨てよう」



僕はマヤの部屋の窓を開けて、クソフォースのカードをビリビリに破いて捨てた。





「マヤ、怖かったね。もう大丈夫だよ」

「ユーリ………」

「嗚呼、可哀想に。大人しく自室待機していたのにドアを壊されてるし、服が破けているし、何よりこの怪我」




僕は窓を閉めて、泣いて震えるマヤに自分のマントを外してそれを彼女の身体にそっと掛けるとふわりと抱きしめて耳元で優しく囁いた。




「うっ……うううッ……!!」

「怖かったね。ほら、僕の腕の中で泣いていいよ」

「ユーリぃ……っ!!怖かった、怖かったよぉっ!!」

「うん」

「殴られたし、複数で私の身体を……ッ!!」

「うん」

「ユーリ以外の人に、犯されそうで……っ、嫌だったよお……」




僕はマヤの恐怖を和らげるようにずっと彼女に密着し、あやすように背中を擦りながら話を聞いていた。





「ね……。しばらく、僕の部屋に来ない?ドア、壊されてしまったし……また襲われそうで怖いから。
マヤが良かったら、こっち来て」

「……ユーリの部屋がいい、ユーリだったら……監禁されてもいい」

「うん……。じゃあ、準備して……。落ち着くまでは、僕の部屋に」

「……はい」




僕はマヤの怪我をした頬に軽くキスをした。




……監禁ルート回収。たーーっぷり愛してあげるよ。
マヤはフラグを回収するのが上手いからね。




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