夢々
□今日
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*今日*
某日午後、某執務室にて。
「いい加減、素直になったらどうや?」
「い、嫌です!」
何やら楽しそうな市丸隊長に必死に抵抗する。
「ふぅん?そんならこうしたろ」
言うとともに指先にグッと力が込められた。
「ほらほら、顔真っ赤やん」
もう私の抵抗なんてあってないようなものだけど、絶妙な力加減で均衡を保たれてる。
「そ…れは、市丸隊長のせいです!!」
あくまでも自分の意思ではないと主張してみる。
しかし。
「へぇ?人のせいにするん?」
逆効果だったようで、徐々に攻められていく。
「あ、ちょっ…」
男と女の差なのか隊長格に抵抗する私が愚かなのか。
何とか止めようとするのだが、止まるはずもない。
「気ぃ強いんは、嫌いやないけどなぁ」
「あッ…」
もはやこれまでか…。
そう思った時。
「…いい加減にして下さい。もう完璧付きかかってるじゃないですか。
の前に、何で仕事サボって腕相撲なんかしてるんです?」
吉良副隊長の静かな声が割って入った。
「そやかて、なかなか降参せぇへんもん」
ボク悪くないも〜んとでも言うような市丸隊長は大きな子供のよう。
「君も早いとこ『もう無理です』って言えば良かったのに」
呆れたように仰る副隊長は、お兄さんのようなお母さんのような…。
「いっつも負けてばっかりだから、今日こそ勝ちたかったんです!」
「あぁ。で、今日も負けたと」
……その通りで返す言葉もありません。
とどめは笑顔の副隊長に刺されましたが。
「さて、気が済んだなら仕事して…って、隊長がいない!?」
「へ?ここに…って、本当だ」
振り返った先は既にもぬけの殻。
「今日も逃げられましたね…」
「そうだね…」
ここのところ同じような会話しかしてない気がする。
変わらないという事は、何も問題ないという事で。
「探しに行ってきます」
「毎日ご苦労様。戻ったらお茶にしようか。
その後は残業だけどね」
ああぁ、やっぱり。
そしてきっと市丸隊長は残業の途中でまた逃げようとするだろう。
今日も隊長が勝つのか、はたまた副隊長が粘るのか。
結果が楽しみだ。
我が三番隊は、今日も平和です。
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