P a r a l l e l

□花火
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花火




夏、まだ少し暑い日中の中。
とある県立高校『木の葉学園』のテニス部は山奥にある合宿場に6泊7日で泊まり込みに来ていた。

合宿場に到着したテニス部はまず自分の部屋に行き鞄を降ろした。
この合宿場は木の葉学園の所有場所で、秋の大会に向けて様々な部活動が使用する。
木の葉学園には運動部が多く、やっとテニス部に合宿場が回ってきたのだ。

男子高の木の葉学園は年齢構わず仲が良かった。
中でも、2年の渦槙成斗(うずまきなると)と内波鎖介(うちはさすけ)は特に仲が良い。


「鎖介!早く練習しよってばょ。」

「あぁ、どうせ俺が勝つけどな。」


鎖介と成斗は二人、ラケットを持ち外に出た。















外に出ると空は快晴で綺麗なスカイブルーの色をしていて、湖の透明な水が静かに流れる。
周りの木々で自然と心が和み、成斗はとても新鮮な気持ちになった。


「なぁ鎖介!俺ってば花火持ってきたんだってばょ!夜に一緒にやろってばょ!」


鎖介は無邪気に笑う成斗に愛しさを感じた。


「あぁ、いいぜ。」

「本当に!?わぁいvvやったってばょ〜!!」


子供の様に心から喜ぶ成斗を見る鎖介の顔は自然と頬が綻んでいた。
鎖介はこの自分が成斗に対する気持ちを確信していた。
俺は成斗が好きなんだ…、と。

しかし成斗に自分の気持ちを伝える事はしなかった。もし成斗に『好きだ。』などと言えば、成斗はきっと自分から遠退いて行ってしまう。
それなら、このままの方が自分にとって幸せだろう、と思っていたから。

そんな鎖介の気持ちにも気付いていないのか、成斗は鎖介に何時も無邪気に笑い掛けるのだった。














「ふーっ…良い汗かいたってばょ。」

「爺くせー事言ってんなよ。ウスラトンカチ。」

「何だってばょ!!汗臭いお前に言われたくねぇってばょ〜だ!!」


そんな事を言いながら真っ白なタオルで汗を拭く成斗を鎖介は冷たい麦茶を飲みながら見ていた。





カチャッ





突然戸が開きキャプテンとその付き添いが入ってきた。
キャプテンの手にはメモ用紙の様なモノがある。


「お前等、顧問の夏架志先生からの指示で今日から俺等とは違う日程で動いて貰うからな。」

「詳しい事は夏架志先生から聞けよな。 心配しなくても別に悪い意味じゃないからな。ほら、早く行けよ。」


そう言って成斗と鎖介を部屋から出した。
仕方なく成斗と鎖介は夏架志の部屋へ行くことにした。














鎖介は扉の前に立ち、二回程ノックをした。
中から夏架志の声がしたのを聞き部屋に入る。


「先生、キャプテンから聞いたんだけど…。」

「うん。お前達には今日からスパルタ練習をして貰うから。覚悟しとけよ〜!」


微笑みながら言う夏架志に不安を感じたのか、成斗は少し困った様な表情で夏架志に問いかけた。


「俺達ってば皆に付いていけてないってばょ?」


すると夏架志はそんな不安そうな成斗に優しく微笑み、二人の顔を見た。


「ふふっ…違ーうょ。その逆。お前等はかなり上手いんだよ。 だからね、皆の足を引っ張って欲しいんだよ。」





 
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