P a r a l l e l

□恋バナv蒼
1ページ/4ページ





恋バナv蒼




ムカつく…苛々する。
だって、折角教室で二人っきりなのに鎖介と言えば俺の真横で活字が一杯の小説に読み耽って居る。
俺が何か話しても空返事。
鎖介の目線は真っ直ぐ小説に行ってる。
そんなに小説が好きな訳?
俺なんかより?

窓硝子から入ってくる夕焼け色の光と、多分野球部の部活の声が微かに聞こえて来る。
俺は鎖介を見た。
俺より全然餓鬼の癖に大人びた表情(かお)に胸が高鳴る。
近くで見てると、俺が鎖介に近付けるのは唯単に教師だからって思う。
どうして鎖介は俺を選んでくれたのかな、とか。
9歳も離れてたら一杯不安な事だってある。
何時鎖介が俺から離れたっておかしくない。


「ねぇ、鎖介…。」

「……何?」


此方見てょ。
小説ばっかり見てないで…。
寂しいんだから。


「もういい。」


俺は鎖介の肩に凭れた。
相変わらず、小説を読む鎖介。
小説に妬きもち妬くなんて……
重症?
俺は救えない鎖介依存症なのかな?
思ってる事…前みたいに言えない。
好きだって…
キスしたいって……。
重くなる瞼の中、「莫迦」ってだけ呟いた。














暫く寝て居たのか、俺は瞼をゆっくり開いた。
ぼーっとしながらうとうとする。
教室はもう真っ暗で、今は星の薄明かりが窓から射し込んでいる。


「ん…鎖介?」


俺の右隣に居た筈の鎖介が居ない。
帰った…?
凄く哀しくなって視界がぼやけた。
そんなにもう俺の事……


「Σひぁあッ!?ι」


俯いてる俺の頬に冷たいモノが触れる。
ビックリして顔を上げると俺を見て笑って居る鎖介が居た。
右手に鎖介の好きなコーラのボトルがある。


「おはょ。目、覚めました?笑」


子供みたいな無邪気な笑みを浮かべながら、左手に持って居るアルミ缶を俺の頬に当てる。
今度は冷たくない、温かい感覚がした。


「何…?」

「ミルクティー。先生が何時も飲んでるヤツ。」


そう言って差し出して来たミルクティーを受け取った。





 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ