N o r m a l

□最後のキス
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最後のキス




深夜、俺は里へ帰った。
皆が寝静まり、梟であろう鳥の鳴き声がよく耳に届く。
俺はある一点へと向かった。
アパートの階段を気配を消して上がって行く。
やがて目的地に着いた俺は其所に住んでいる人物を呼ぶべくドアの横にあるインターホンを押した。


ピンポーン…


闇の中チャイムの音が静かに鳴り響く。
暫くすると扉が開いて住民である人物が出て来た。


「サス…ケ……?」


目を大きく見開き俺を見つめる金髪に、俺は静かに口に弧を浮かべた。


「久しぶりだな、ナルト…。」

「っ…なんで…?!」


驚ききって目を丸くした儘のナルトが可笑しくて笑いが込み上げて来る。
無理もない。
俺は里を抜けた人間で、お前が来た時にも戻ろうとしなかった奴が今目の前にぽんと出て来ているのだから。


「丁度木の葉の前を通り掛かったからな、そのついでだ。」


本当はお前に会いたくて会いに来た、なんて誰が言うかょ。
ずっと会いたかった。
瞳を閉じて何度お前の姿を映し出しただろう?
会いたくて触れたくて仕方なかった。
だから会いに来たのだ。
意を決して。


「取り敢えず中に入れてくれないか?此所じゃ見付かる。」

「分かったってばょ。」


すんなりと聞き入れてくれたナルトに俺は礼を言うと中に入った。
前を歩くナルトを見つめていると、突然ナルトが振り返って俺に抱き付いて来た。


「何?」

「本物だょね…?」


弱々しく擦り付くナルトに愛しさが込み上げて来る。
ナルトはこんなに弱かっただろうか?
昔と違う弱々しいナルトに俺は指で唇をなぞった。


「偽物ならどうする…?」


態と意地の悪い質問をしてやる。
するとびくりと音がする程ナルトの身体が震えた。
そしておずおずと俺を見上げる。
その仕草が可愛くて俺はナルトを壁に押さえつけた。


「ナルト…。」


唇を唇で塞ぐ。
唇の感触は昔から何も変わってなくて
薄く、柔らかくて温かかった。


「サスケ。」


求める様に、今度はナルトから俺の唇を塞いだ。
抱き締める手を強くする。
だけど俺はお前を抱き締める事が出来なくて
唯、お前のキスに応えるだけだった。

本当は抱き締めてやりたい。
強く
つよく…。
だけど里を、お前を裏切った俺にそんな事する権利はない。
ごめんな?
心の中で謝るけど許される筈はない。
やがてナルトが唇を放すと俺はナルトから離れた。


「もう行かないと…。」

「嫌だってばょ。」


距離を取った俺に、また抱き付くお前。


「行かないでってば…。」


泣きながら訴えて来るけど、俺は何もしてやれない。
唯その姿を目に焼き付ける。
好きだょナルト。
だからもう泣かないで。


「もう、お前は俺の事を忘れろ。」

「嫌…。」

「俺以外の奴と幸せになれ。」

「嫌だってば…。」


より一層きつく俺を抱き締めるこの手が愛しい。
今直ぐにでも抱き締めて
お前だけを見ていたい。
それでもそんな事は叶わないって分かってるから
泣きたいのは此方だょ。
俺が居てもお前を幸せになんて出来ない。


「好き…行かないでサスケ。」

「………。」


連れ去ってしまいたい気持ちを押し殺す。


「さよならナルト。」


俺はお前に最後のキスを落とした。
今迄愛してたって事
今でも愛してるって事
これからも愛してるって事
全ての気持ちを込めて…

俺は一人泣くお前を残して家を後にした。
もう二度と会わなければ良い…。




―end――…





 
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