N o r m a l

□灯火
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灯火




残酷な知らせが耳に届いた。
真昼の澄んだ蒼の下ではとても似合わない知らせ。
耳を疑って、静まり返った部屋で静かな涙を落とした。
一つ落ちた後、後から後から溢れ出した冷たい雫。
その雫が真実を物語って居た。
友達の声も聞かず、飛び出した部屋。
独りだった。
それは独りになってしまった瞬間。
消えて行く大切な灯火。
突然吹き消された灯り…
暗い
真っ暗だ。
俺は人を好きになってはいけないのだろうか。
慕って居た人が次々と消えて無くなる。
次は誰?
失う位ならなくなりたい。
もう嫌……





家に帰りたくなかった。
どうしてかは知らない。
唯帰りたくなかった。
コンビニで買ったミルクのアイス。
一人で食べるのに何故か二人で割って食べるアイスを買ってた。
3年前迄の日々が甦る。
旅の途中、半分個して食べた二人分のアイスクリーム。
どっちの奢りかたった10両のアイスにもめた。
楽しかった。
あの夏の日…。
アイスを見つめる瞳に溜まった涙。
溶けて落ちたアイスの滴。


「エロ…仙人……。」


自分が付けたあだ名を口にした途端ボロボロと溢れ出した涙と言う名の雫。
声を出せずに泣いた。
涙を拭う事すら出来ない。
俯いて泣いて居る俺の前に出来た黒い影にハッとして、隣に座った人を見た。
掛けられた言葉にコクリと頷いて半分になって返って来た溶け掛けたアイスを口に入れた。
ミルクアイスの甘さと涙のしょっぱい味が混じっていた。

アイスを食べ終えて黙りこくった儘の俺に
何も言わずに付き添って居てくれた先生。
風に揺られて擦れ合う木の葉の音と小さな虫の声だけが耳に届いた。


「…もう今日は遅いから早く帰って寝なさい。明日、早朝任務なんだろ?」

「………。」

「ずっと泣いてる儘じゃ、自来也様も哀しむぞ?」

「……うん。」


涙を脱ぐって立ち上がった俺に、イルカ先生も立って俺の頭を撫でてくれた。
「ありがとう」と一言呟いてから家に向かって走って行く。
走って居る間も視界はぼやけてた。





 
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