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□トマトの味
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トマトの味
ある日の午後。
一人の少年が丘の上の木陰に向かう。
小走りに走る少年の金髪が風でなびき、大きな蒼い瞳に真夏の空が映る。
「サスケー!早くしろってばょ!!」
「煩せぇ、ウスラトンカチ!! 態々飯に付き合ってやるんだから俺に文句言うな!#」
ナルトの後ろを歩くサスケは少し不機嫌そうに叫んだ。
そもそも二人が一緒に昼食を取るのには訳があった。
其は今朝の事―――…
「先生、サスケがまた俺の事バカって言ったってばょー!!#」
演習中、唇を尖らせてナルトはカカシに不満を訴えた。
ナルトの話に笑顔で頷くカカシにサスケは何故か不満を覚えた。
普段は別に何とも思わない事なのに。
「……バーカ。」
ボソリとサスケの口から洩れた言葉がナルトの耳に入る。
「んな!ってめーバカサスケ!!バカって言うなってばょ!!#」
「バカにバカと言って何が悪い。バカ。」
再びサスケにバカと言われたナルトはキーキーと騒ぎ始めた。
二人の様子にカカシは溜息を吐く。
「お前等ねぇ、何時も何時も同じ事で喧嘩してんじゃな〜いの。 この儘だと班が崩壊するから、交流の為に今日の昼食を一緒に取る事ー!分かった?」
笑顔で言い放ったカカシにナルトとサスケは不満を垂れたが、カカシに「命令!」と言われ仕方なく諦める事にした。
丘の上の木陰に入った二人は、各々が持参していた弁当を取り出した。
メロンパンに喰い付くナルトに対し、サスケは――…
「うっわ〜、弁当赤いってばょ…。ι」
弁当箱に敷き詰められているのはおにぎりとそのオカズらしいトマトのみ。
「煩せぇ、見んな。」
サスケはそう言って弁当箱を反らすが、一度興味の湧いてしまったナルトには意味が無かったらしい。
「なぁなぁ、お前ってば何時もそんなの食ってんのか?」
「そんなので悪かったな。」
「弁当箱が赤くなるまでトマト詰めるって事は、サスケトマト好きなんだな!?」
「別に嫌いじゃない。」
「じゃあ好きなんだな!?」
会話を終わらせようとしても次々と質問してくるナルト。
う、ぜぇ……。ι
サスケは溜息を吐いて立ち上がった。
突然立ち上がったサスケにナルトは少し驚いてサスケを見つめる。
「サスケ、さっきの質問まだ答えて無いってばょ! なぁトマトって美味しいのかってばょ?」
楽しそうに笑顔を浮かべて訊いてくるナルトに、サスケは不適に笑みを浮かべた。
「そんなに気になるんなら食ってみる?」
そう言ってナルトに弁当箱を差し出す。
「いいってばょ、サスケのだし。」
「俺が良いって言ってんだょ。食え!」
少し強引にトマトを差し出す。
けれどナルトは食べようとしない。
「俺、野菜ダメなんだってばょ。ι」
「トマトは俺が認める食いモノだぜ?其処らへんの野菜とは違ってリコピン、β(ベータ)カロチン、ビタミンU、ケルセチン、クロロゲン酸、カルシウムetcが入った栄養満点の野菜だ!!疲労回復の効果もあって食って損をする事は無い!食え、ナルト!!」
「い、要らない!要らないってば!!ι」
ナルトは少し困った表情で首を振って否定した。
そんなナルトを見て諦めたのか、深く溜息を吐いたサスケ。
ナルトの目の前に座りトマトを口にする。
「…仕方ねぇな。お前が其処まで否定するなら――…」
「え?サス―――…」
サスケの顔がナルトに近付く。
そして唇が触れた。
「………!!」
自分の唇を塞ぐサスケを退けようとナルトは必死に抵抗するがビクともしない。それどころか口の中に何かを入れ込んでくるサスケ。
な…に…?!
口の中に広がるのはトマトの味。
どうやらサスケは先程口にしたトマトを移し込んでいるらしい。