□「好き」はなかなか「嫌い」にならないが、「嫌い」はすぐに“好き”になる
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へー、そうなん
へー、そうなん
へー、そうなん
うるせぇ、ばかあ




エイプリルフールなど、日頃から嘘を付いている人間(正確には国なのだけれど)が4月1日の今日、その習慣に倣うなどと無い訳で、ならばその逆を行おう、そう決めた時間はいつもより遅い朝で早くそれを行わなければ間に合わなかった為に戸惑いもあったが押し潰すように無視し、朝食代わりのトマトをかじりながらある人物の元へと出掛けていった
急いで、それでも数時間が経って、屋敷のチャイムを鳴らせばガチャリと云う金属音と共に出て来た特徴的な眉毛の彼で、自分を見るなり随分と驚いた顔をしていた、まあいつも嫌味皮肉を言い合っているからだろう
「カークランド、俺気付いたんよ」
いきなり、外の玄関口で言うのもなんだったが、まあ良いだろうと言葉を続ける
「お前の事好きや犯したい」
真剣な眼差しで見つめながら言ってみたら「‥は‥‥!?」と、いきなり来られ昨日まで仲の悪かった人物から下品な告白を受けたのだから当たり前だろうか
「エ、エイプリルフールにしては質が悪りいぞお前‥」
ほんのり赤い顔でこれでもかと睨まれたけれどむしろ可愛い、青姦でもいいなと隅で考えながら「嘘やないて」模範的な返答
「なっ‥だ、第一唐突過ぎるだろ!昨日まで喧嘩売ってた癖に何なんだよ!!」
「‥やって、伝えられへんのや」
一度区切ってから、らしくないと若干自覚しつつ髪を掻きながら独り言のように呟く
「こんな日でもないと、言えへんのや好きやとか犯したいとか」
起源も曖昧なそれに縋るとは、なんと情けない事か、立ち尽くしている彼を抱きしめてみれば温かく首筋に顔を埋めればキツくない程度に、薔薇の香りがした
「カリエ、ド‥っ」
本気で嫌がっていない事なんて、分かっている
強がっている心に入り込む、そんなこと、簡単で、でも
「アーサー、好きや」
ぎゅっ、そうすれば小さく跳ねる身体
「‥俺も‥‥」
言いかけた瞬間、響く低音、その元は多分、近い部屋からの古時計からで何故かは分からないけれど、水面に広がる波紋のようなものが感覚的に浮かんだ
「好き」
掻き抱かれ、苦しいと感じるまで力を込められやはり、痛い
そういえば英国では、嘘を付いて良いのは正午までと聞いた事があったから、無意識だろうが偶然だろうが言い訳は出来ないだろう、そんな馬鹿な考え
視線を合わせ、互いの距離はあっという間に零
取った手はじっとりと汗ばんでおり、指を絡ませれば"離さないで"とでも言うように強く繋がれた

(「好き」はなかなか「嫌い」にならないが、「嫌い」はすぐに“好き”になる)

end

ちょっとだけ親分と眉毛を原点に近付かせてみた
なんかおかしいけど、まあいいよね!!←

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