遙かなる時空の中で

□初恋
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「‥鬼だって、言うんだ‥」



「えっ‥?」



寂し気に囁かれたその一言に、思わず九郎が問い返すと、少年は悲しそうに言葉を続ける。



「ぼくの髪の色は、おかしいんだって‥。だから、みんな“鬼の子”っていって、怖がるんだ‥」








――来ないで、鬼の子!







――やだっ‥恐ろしいわ‥







――何でこんな子が生まれたのかしらね‥






「‥ぼくの髪の色が変だから‥。だから、みんなぼくからは離別くんだ‥‥」



そう告げる少年の横顔が、あまりにも切なくて悲しくて――


気付くと九郎は、



「そ‥そんなことはないぞっ!お前のその髪は、とってもきれいだ‥!!」



少年の肩を思わず掴みながら、そうその少年へと叫んでいた。



「えっ‥?」



「俺が‥俺が、おまえがそんもん着ないでもいい国を作ってやるから、だから‥だからっ‥」








―――だから‥









「そんな悲しそうな顔するなっ‥!」



めいいっぱいの想いをこめて、そう少年に告げる。


すると、その少年は少し驚いた顔をしたのち、


「‥うんっ‥ありがとう‥!」



そう言って、九郎の言葉に本当に嬉しそうに微笑む。



(‥あっ‥‥)







――ドキッ‥







綺麗で、可愛くて。








どきどき。ざわざわ。








まるで太陽みたいに輝くその笑顔に、九郎の胸が淡く高鳴る。








胸が破裂しそうになるこの気持ちは―――





「‥‥‥っ‥!!」





気付くと九郎は、いても立ってもいられず、急いでその場を走り去って行く。



「あっ‥!ちょっとまって‥!」



そう自分を呼び止める少年の声も聞かずに、降りしきる雨の中へと飛び出して行く。



(何だっ‥!?なんなんだこの気持ちは‥!?)




やけに胸が高鳴って、落ち着かない。




自然と顔が火照ってくる、この気持ちは‥‥



「〜〜〜‥!!」



初めての訳の分からない気持ちを抱え、幼い九郎はじっとしていられず、雨の中を走り去っていった。









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