遙かなる時空の中で4

□君と、同じ空の下
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「‥ふぅ‥」


自室に戻り、ベッドに横になり小さくため息をつく。







――俺と一緒に、日向に来てくれないか?







今日サザキに言われた彼の言葉が、頭の中で蘇る。







彼の言葉は分かる。








彼は、日向の一族の頭領だ。








いつまでも、この中つ国にいるわけにはいかないだろう。










そして、ようやく戦後の混乱も収まり人々に笑顔が溢れる世界になってきた。










彼は、この国での自分の役目を立派に果たした。










彼が、これ以上此処に留まる理由は無い。











そして、それは自分も同じで‥‥。






「‥僕は‥‥」




――コンコン。




すると、部屋にいきなりノックの音が響く。


「那岐、ちょっといいかな?」


千尋だ。


「どうしたの?何かあった?」


「うぅん、何も無いわよ。ただ、ちょっと話したいなって。‥駄目かな?」


そう控えめに尋ねる、千尋に那岐は優しく微笑みながら、


「全く‥しょうがないなぁ‥‥」


こうも千尋に頼まれては、断れるはずがない。


那岐は面倒くさい気に、けれども優しく微笑みながら千尋を部屋に招き入れた。





――そして、二人でたくさんの話をした。








千尋の恋人である風早のこと。








遠夜が、城の皆と少しずつ話せるようになってきたこと。








アシュブィンが、この間豊葦原へ千尋達に会いに来たこと。











布都彦のお母さんが、元気になってくれたこと。










柊がまた忍人を怒らせて、平手打ちをくらっていたこと。









一つ一つ楽しそうに千尋が話していく。


そして、そんな千尋を那岐は微笑ましい気持ちで見つめていた。


「凄いわよね。柊ったら、忍人さんにどんなに邪険にされても絶対に諦めないんだもん」


「アイツもしつこい性格だからなぁ‥。いい加減、諦めればいいのに」


「ふふ‥那岐ったら‥」


那岐のいつもの毒舌に、くすくすと楽し気に笑う千尋。


「‥‥ねぇ、那岐‥?」


ひとしきり笑ったあと、千尋が改めて那岐へと向かい合い驚きの言葉を口にした。





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