short story

□秋時雨
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からりと晴れる秋空が続く中、今日は珍しく雨が降った。
朝から降り続ける秋雨はまだ、止む気配は無い。

「銀ちゃん、私お腹すいたアル」

久々に入った仕事の帰り道、河原沿いを歩きながら神楽が呟く。そういえば、もうお昼時だった。

「お腹と背中がくっつきそうネ」

「朝早かったですしね」

そう言い新八と神楽は、銀時の手の中にある報酬を見つめていた。

「わーったよ、何か食いに行くか?」

「ひゃっほう!私お寿司がいいアル!」

「バカヤロー、その辺の定食屋に決まってんだろ」

ブーブーと文句を言う神楽から視線を外した時、銀時の目にある景色が映った。

「…悪ィ、二人とも先行っとけ」

きょとんとする新八の手に、お札を三枚握らせる。

「これで好きなもん食っときな。俺ちょっと用事思い出したわ」

「えっ、ちょっ…」

早々と告げると、銀時は民家がある方とは逆の方向へ走り去って行った。







着いた先は、先ほど目に止まった大きな桜の木。雨のせいか葉は落ち、殆ど枯れ木に成り下がっている。
何故か心惹かれたこの桜の木。きっと、その理由は、

「村塾の近くに生えてた桜の木に似てるな」

背後から聞こえた誰かの声。しかし、振り向かなくてもその人物がわかったのは、何となくコイツが此処にいるような気がしたからだ。
でも、出来れば会いたくなかった。

「…こんな所で何やってんの」

「散歩」

くつくつと笑う艶のある声は唯一、今も昔も変わってない。

「次会ったらぶった斬るって言ったよな?」

「そんな勇気ねェくせに」

小馬鹿にしたような言い方に本当に斬ってやろうかと思ったが、それが出来なかったのは多分、コイツから前のような禍々しい雰囲気がなかったからだと思う。

「銀時、」

名前を呼んだ彼が手を握ってきた途端、あまりの冷たさに銀時は思わず振り返った。
見ると高杉は傘もささず、いたるところから雫が滴っていた。

「お前っ…」

反射的に手を引き、自分の持っている傘の中へ入れる。

「馬鹿か!?こんな雨の中傘ささずに散歩してんじゃねェよ!」

頬に触れれば、死人かと思うぐらい冷え切っている。きっと長時間、この雨の中いたに違いない。
ため息をつく銀時と対照的に、高杉は笑っていた。

「…何笑ってんだよ」

「いや、昔と同じだなァと思ってな」

その言葉で思い出す。
そういえば昔、喧嘩した高杉が傘も差さずに雨の中出て行って、ガタガタ震えているコイツを見つけたのも桜の木の下だった。

「お前は昔っから変わんねェな」

「…お前は変わったよ」

握られた手に力を込めて、そのまま抱きしめる。
高杉が濡れないように、配慮しながら。

「…あったけェ」

「てめぇが冷たいんだよ」

そのまま何を喋ることなく、ただじっとする高杉。
この時間が続くようにと、雨が降り続けるのを何度も祈った。




END
 

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