short story
□dream about baby!
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「子供欲しいなぁ…」
情事後、服を着ることも無く、安っぽい布団の中でのんびりとくつろいでいたら、銀時がいきなりそんな事を言い出した。
あまりにも突然すぎて、思考がついていかない。そんな俺の気も知らず、身体をこちらに向け会話を続ける。
「な、高杉もそう思うだろ?」
にこにこと笑いながら言う銀時に、俺は怒りを覚えた。その言葉は子供を孕めない俺にとったら、屈辱以外の何者でもなかった。さっきまで"愛してる"とか言ってくれてたクセに、やっぱりコイツは女の方がいいのか…。
そう考えていたら次第に悲しくなってきて、俺は銀時に背を向け距離を置いた。
「…そんなに欲しけりゃ、女作って孕ませりゃいいだろ…」
絶対に自分の口からは言いたくなかった言葉。目頭が熱くなるのを必死に押さえていたら、銀時が後ろで笑ったのが分かった。
「それは無理。だって俺は、高杉との子供が欲しいの」
耳を疑い、反射的に振り返る。俺が勘違いすることを見透かしていたのか、そこにあるのは意地悪い笑顔だった。
「高杉との子供以外、俺はいらねぇよ」
その言葉に嘘はないって分かったのは、銀時の瞳が真っ直ぐだったからだと思う。でもその姿がすごく格好良くて、俺は熱が顔に集中するのがわかった。
「真っ赤」
「うるせェ」
悪態をつくも、心は銀時を求めていて、気付けば俺は空けた距離の分だけ近付いていた。
銀時がまた小さく笑う。
「俺達の間の子って、どうなると思う?」
「…さぁな」
「切実に直毛がいい」
「なんだそりゃ」
思わず笑うと、つられて銀時も笑った。
「もし高杉に似たら、強情で我が儘で、かわいくなるだろうな」
「んだよ、かわいいって」
「本当のこと」
むかついたけど、頭を撫でられて言いたい言葉も言えなくなった。本当に俺は、銀時に甘い。
「じゃあ銀時に似たら、バカでアホで万年発情期だろうな」
「え、何それ。いいとこナシ?」
「本当のことだろ?」
クツクツと笑えば、不服そうな表情をする。でもなんだか、すごく幸せだった。
「高杉は、男の子と女の子、どっちが欲しい?」
また唐突に質問される。
少し考えたが、答えが出てこなかった。
「…どっちでも。銀時は?」
「俺は断然女の子!!」
すると突然表情が輝き、理想の女の子像を語り出す。
「男の子でもいいんだけど、やっぱ女の子って可愛いしさ、癒やされんじゃん」
「そうなのか?」
「当たり前!高杉似の女の子だったらモテモテだな」
熱く語る銀時がバカみたいに思えてきたが、それでもどこか幸せそうな雰囲気を醸し出す彼に、俺は自然と笑顔になる。
「じゃあもし銀時似だったら、人気者だな。男の子だったら…、かなり悪ガキになりそうだなァ」
「高杉似でもそうじゃね?毎日学校呼び出されそう」
そんな事を言い合っていたら、女の子より男の子の方が俺達の子供にしっくりきている気がした。
「どちらに似ても悪ガキか…」
「そーだな。頑張って育てなきゃ」
その言葉は、まるで本当に子供ができるかと思わせる口振りだった。俺は心臓が掴まれたような感覚に陥り、どうしようもなくて銀時の背に腕を回した。
「…銀時、」
「ん?」
「俺ァ、子供作れねェんだよ」
「ん、知ってる」
知ってるよ、と二度繰り返した銀時に、俺は重なるだけのキスをした。
「たかっ…」
「子供、作ろうぜ」
「…は?」
俺の言葉を理解できなかったらしく、…いや、理解できているが俺の口からこんな言葉が出るとは思わず、困惑している。
その姿が少し面白くて、俺は銀時が理解できるようにもう一度言った。
「子供作れねェけど、お前との子なら産んでもいいぜ」
「高杉っ…」
「抱けよ」
抱き寄せられ、さっきよりも深いキスを交わす。息が苦しくなって唇を離したら、銀時が俺の上に跨った。
「今日は気合い入れて子作りしちゃおうか」
「ばーか」
互いに笑い合った後、銀時からキスの嵐が降ってきた。
END