short story
□restful
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それから毎日のようにそこへ遊びに行く2人の間には、前とは違う"何か"で互いを想い合うようになった。
それは何なのかはまだ2人には分からなかったが、銀時も高杉も、ただ一緒にいるだけで幸せな気持ちになった。
そんなある日の事だった。
先に来ていた銀時を追いかけるように高杉はそこへ行く。
銀時は走ってくる高杉に気付くと、自分の背に何かを隠すように高杉と向き合う。
その行動を怪しく思い、高杉は銀時の背を覗き込もうとするが、なかなか見せてくれない。
「何隠してんだよ」
「何でもねぇって!それより座れよ」
不服に思ったが、素直に銀時の前に腰を下ろす。
嬉しそうに笑っている銀時に、今度は疑問を抱いた。
「…何笑ってんだよ気持ち悪ぃ」
「酷っ!」
落ち込んだ様子を見せると、調子を狂わされたのか高杉はクスクスと笑う。
銀時は安心してから近い一つ咳払いをして話し出す。
「高杉さ、ちょっと目瞑っててくんね?」
「は?何でだよ」
「いいから!」
仕方無く渋々目を瞑る。
視覚が閉ざされているためか、聴覚が敏感になる。
ガサッと草の触れ合う音が聞こえたかと思うと、頭の上にふわりと何かが被された。
「もういいよ」
そう言われ、ゆっくりと目を開ける。目の前には花の冠を頭につけた銀時がいた。
…そして、自分の頭には白いスカーフと、銀時と同じ花の冠が置いてあった。
「…何だこれ?」
「すげぇだろ!その花の冠、俺が作ったんだぜ!」
誇らしげに言う銀時だが、1人でこんな花の冠を作っているところを想像すると、笑いが込み上げてきた。
「何笑ってんだよ」
「いや、別に」
こらえているのに自然と顔が笑う。その控えめに笑う高杉に、銀時は自分の心臓がどくりと高鳴った。
「…なぁ、高杉」
急に改まる銀時に、高杉は笑うのを止める。
花の香りを含んだ甘い風が、そよそよと流れた時だった。
「俺と、結婚してください」
顔を真っ赤にして告白する銀時。
高杉は目を見開いた。
「俺、高杉の事好きなんだ。…よく分かんねぇけど、好きって、こういう事なのかなとか…」
緊張しているのか、もう最後の方は言葉になっていなかった。
そして黙り込む。
少しの沈黙の後、高杉は一瞬微笑み、そして銀時の手に自分の手を乗せた。
「俺を幸せにしてくれるなら、いいぜ?」
その瞬間、銀時は安堵の表情を浮かべ、高杉を思い切り抱き締めた。
「俺、絶対高杉の事幸せにするって誓う!」
「…うん」
「高杉の事、大好きだから!」
「うん」
身体を離し、2人は見つめ合う。
「高杉、新婦さんみたいで、綺麗」
「男だぞ」
「男でも、綺麗」
笑い合うと、銀時は高杉の頬に優しく手を当てる。
「大人になったら、必ず迎えに行く」
「…待ってる」
2人きりの結婚式。
誓いの言葉のように天に響いたその声は、風に吹かれ、2人を包み込むようにして消えた。
END