捧げ小説
□Love Drama
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「名探偵が、聞いて呆れるわね」
「お前も平然としてんなよ!」
***
―帝丹中学。
「せっかく中学最後の年なんだから、
思い出に残ることをしようと先生方の間で決まったそうです。
皆さん、何かやりたいことを挙げて下さい」
HRを進める委員長の声を子守唄にウトウトしてた俺は、
右隣の灰原の焦った声により覚醒させられた。
「ちょっと、江戸川君……! あなたも反対してよ!」
「んぁ?」
状況を掴めない俺は間抜けな声を出すと、
辺りをキョロキョロと見回した。
すると、黒板には―。
「俺が主人公で、灰原がヒロイン!?」
さっきまでの眠気はどこへやら、
思わず椅子をひっくり返して立ち上がった。
劇をやることになったというのはなんとか理解出来た。
でも、なんで俺達!?
「ラブストーリーやりたいんだって。
そうしたら、自然とこうなっちゃうでしょ?」
灰原の前の席の歩美ちゃんが、
苦笑しながらコソッと説明してくれた。
「……待った。台本は?」
恐る恐る訊いてみる。
なんだか嫌な予感が―。
「それが、まだ決まってなくて―」
「そのことなら、この園子様に任せなさーい!」
HR中にも関わらず、ドアを派手に開けながら教室に入ってきたのは、
もちろん園子と蘭と……
母さん!?
「ハァイ、コナンちゃん!」
「どうなってんだよ?」
頭ショート。
でも、そうなってるのは俺だけじゃない。
この三人を知らないクラスメイトはもっと混乱してるだろう。
「たまたま帰国してたのよ。
それで久しぶりに学校に来てみたら、
おもしろそうなことやるって言うじゃない?
私も台本書くの手伝おっかなぁ?」
ウキウキと楽しそうに言いながら、完全に自分の世界へ。
……いきなり帰国はこの際スルーするとして、質問の答えになってない。
と、それよりも!
「いや、書かなくていいから!」
園子と母さんに任せたらどんな話になるか
わかったもんじゃない!
「なんでぇ? 遠慮しなくていいのよ?
あっ、優作との待ち合わせに遅れちゃう!
じゃあ園子ちゃん、後で打ち合わせしましょうね」
……帰った。
「まあ、そういうわけだからガキンチョ達、
台本の心配はしなくていいわよ。
とっておきのラブストーリー、考えてあげるから!」
「あっ、ちょっと待って、園子姉……」
……俺の周りは、話を聞かない奴が多い。
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