捧げ小説

□Love sick
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現在23時36分。

私はただ進む時計の針を、ずっと見つめていた。

何分こうしていたかわからない。
彼は最近仕事が忙しくて、一週間ぐらいは家を留守にしたまま。
無理だろうと理解はしているけど…今日だけは帰ってきてほしい。
―日付が変わるまでに。

しばらくすると、
物思いにふけっている間にぬるくなってしまったコーヒーを入れかえに、
台所に立った。


「普段なら、やらないのに」


自嘲の笑みを浮かべる。
ふとそんなところへ、
以前吉田さんからもらった紅茶が目に入った。


「今日はこっちにしようかしら…。
馬鹿げてるけど、一年に一度だものね」


紅茶をお揃いの二つのカップに注ぐ。

ねぇ…。
私、これほど待ってるのよ。
今日が何の日か忘れちゃったの?

無情に時間だけが過ぎていく。

40…42…54分……。


「もういいわよ。期待した私がおかしかったんだわ」


ついにはやけになり、用意していた紅茶を捨てた、その時―……。


「悪い! 志保、まだ起きてるか?」


玄関先で、待ち望んでいた彼の声が聞こえた。





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