捧げ小説
□雨のち晴れ
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「いいか、愛。ホームズはな――」
「ちょっとあなた、愛に変なこと吹き込まないでちょうだい」
新一が本を片手に愛に熱弁しているところを、
志保がすかさず注意する。
もう日常風景にもなっているほど、この家庭では当たり前のことだ。
愛は新一と志保の子供で、
この子には悲しい思いをさせたくないから、という理由で「愛」。
もうすぐ5歳になる。
「愛、今日は私と一緒に実験しましょう?」
「あっ、おい! 抜け駆けかよ!」
「何言ってるのよ。血生臭い推理小説より、ずっとおもしろいわよ」
こんな口喧嘩が出来るのも、幸せの内。
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