捧げ小説
□Love sick
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「工藤君!」
慌てて時計を見る。
…大丈夫。
まだ56分。
口元に軽く笑みを浮かべると、ドアを開けに行く。
「…おかえりなさい」
「本当にごめん! こんな時間になっちゃって…。
もっと早く終わるはずだったのに、事件が長引いたんだ。
だから…その…プレゼントも買えてなくて……」
今にも土下座しそうな勢いでひたすら謝り続ける。
だが志保はそれを遮ると、
「シーッ。違うでしょう? 今言うことは……?」
チラッと腕時計を見て先を促す。
新一は真っ直ぐ志保を見つめ、
「…お誕生日、おめでとう」
その瞬間、志保の微笑は満面の笑みに変わった。
「遅いわよ。
…でも、あなたがいてくれれば、プレゼントなんていらないわ」
志保にしてはめずらしく、
頬を赤らめながらも、新一の腕にしがみついた。
「入って? アフタヌーンティーにしましょう?」
11時59分。
遅すぎるアフタヌーンティーを楽しみ、
二人の時は、今、始まったばかり。
End.