仲間とのお話
□食
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「僕は遠慮させてもらいます」
じゃあ移動をと、車に乗り込もうとした時、背中に助手の声がかかった。
「なんで。別にいいのに」
「いえ。ご馳走していただく気満々の意地汚い先生と違って、僕にはまだ仕事がありますので」
「ちょっと!人聞きの悪いこと言うな!!」
「へぇ、なんか忙しそうだな。…もしかしてまずった?」
「構いませんよ笹塚刑事!先生は元より食の権化ですから!事務所で貪られると、足りなくなったときゴミすら漁ってしまうので困ってるんですよ〜!」
「そんなことしたことない!」
「むしろ良い機会ですから、残飯でも生ゴミでも与えてください★」
「ちょ、私犬違うし!!笹塚さん本気にしちゃうじゃない!」
「嫌だなぁ〜!むしろ望むところじゃないですか!」
「望まねーっ!」
車の横で、ぎゃあぎゃあと二人のやり取りが続くのを見ながら、紫煙を吐き出した。
賑やかな空の下に、この灰紫のあわないことったらない。
珍しく、石垣がいない事件で、
たまたま、昼食がまだで
偶然に居合わせた、いつも事件に首を突っ込む少女と助手と、
ならばたまには一緒に食事でもと、気まぐれの心が動いた。
調書は戻ってからでも良いだろう。
現場はさっき他の刑事と事後処理を軽く済ませた。
未だぎゃあぎゃあといい争いが続いている二人のやり取りは、端から見れば微笑ましい。
アイツも、あんな感じ、だったな。
ふぅと重たくなった心と共に、再び紫煙を吐いた。
「…で、どうする?」
頬をつねられている弥子ちゃんに声をかければ、引っ張られて伸びまくったひどい顔のままこちらを向いた。
「い、いきはふいきはふ!!」
「先生、人間の言葉でお願いします」
「じゃあはにゃひぇーっ!!」
まったく。微笑ましいな。