魔人と女子高生のお話
□近似色
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「えー!どうしたのこの子!」
茶色い毛で虎柄の小さな猫は、まだ自分の両手のひらよりちょっと大きいくらいの大きさの子猫。
まだ未発達の顔立ちに、生えはじめの細くて柔らかい毛はもさもさしていて、ストラップになってるような毛玉に見える。
長いまつげの向こうに飴玉みたいな黄金色の目があった。
私と目があったとたん、小さく高く鳴いて、目を細めた!
「かわいい〜!」
まるで笑ったみたいだ!
「主人への挨拶もそこそこに小動物をめでるとは何事だ、ナメクジ」
小さな猫にかけよって撫でていたら、頭上から相変わらずの声がかかる。
「あ、ただいまネウロ、アカネちゃん」
「遅い」
「今日は遅れてないよっ!それより、この子どうしたの?」
撫でていた手を止めたら、その手に鼻を寄せて、甘えるように頭を擦り寄せてきたのを見て、思わず頬が緩んだ。
なんだろ、このかわいい生き物は…!
「今朝睦月が拾ってきたのだ」
「睦月ちゃんが?」
「捨てられていたと言って連れてきた。貴様に飼い主探しを手伝ってほしいと言っていたぞ」
「へぇ〜、そっか」
彼女ならやりかねない。
ニーニーと鳴き始めたネコに、アカネちゃんが『ごはんだよ』とくれた猫缶をあげてみると、子猫は一生懸命ご飯を食べ始めた。
カフカフいってる。
「かわいいなぁ〜vv」
「貴様、先程からからそればかりだぞ」
「だって、かわいいんだもんーvvふわふわの毛にクリクリの目!
…なのに、こんなかわいい子を捨てるなんて…」
拾ってきた睦月ちゃんも、今の私のように切ない気持ちを抱いたに違いない。
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