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短文の夢を書き散らかします。
(名前変換無し)

◆死々若丸 


智に働けばツノが立つ。
情に竿刺せば嗤われる。
意地を通せばお仕置きだ。

とかく死々若は御しがたい。





「――ふう、私ってば文豪!」

「土下座しろ。
かの文豪ではなく俺にな」



2010/06/30(Wed) 07:31 

◆桐島 

「私、桑原君が好きなのよ」

「……へぇ」

「でも、雪菜ちゃんも好きなのね」

「……ふーん」

「二人が一緒にいるのを見るのはくるしいけど、二人が幸せそうにしてるのは嬉しいの」

「……ほほー」

「桐島ぁ、恋って、どうしようもなくフクザツで難しいものなのね」

「ああ、まったくだな」



(何もかも、上手く行きやしねぇんだからよ)


2010/06/30(Wed) 00:58 

◆蔵馬 

「ひい。寒さが骨身にしみる」

「だから言ったでしょう、そんな薄着で外に出るなって。

ほら、俺のマフラー貸しますよ。少しは違うでしょう」

「あ、いい。
私マフラー苦手なんだ。何かちくちくして。
だから、気持ちだけ頂いとく」

「……そうなんですか。
じゃあ──」



「──ちょっと、蔵馬さん。
何なんですかこの体制は」

「俺の腕なら、文句はないでしょう」

「すこぶる恥ずかしいんですけど」

「嫌ならやめますけど?」

「…………」



「…………暖かいから、いい。」



(冬季限定?
いいえ、あなた限定です)





2010/04/03(Sat) 14:38 

◆陣? 


彼が少し、指を握りしめれば
私の手のひらは簡単に砕けるでしょう

彼が少し、腕に力を込めれば
私の内腑は容易く潰れるでしょう

彼が少し、その牙を剥いたら
私の喉はたちまち裂けてしまうでしょう





だから、彼の指は緩やかに私の指に絡み

彼の腕は優しく私の体を包んで

その唇に牙を隠して、そっと
彼は私に口付けを落とすのです。



(コワレモノ、注意)





2010/01/12(Tue) 16:46 

◆浦飯幽助 


「せっかくのイブだというのに、なんであなたは屋台準備に励んでいるんでしょうか」

「そりゃあ、あっちもこっちもカップルだらけで嫌気がさした野郎共のオアシスになるためだろ」

「ほうほう、要約すると『螢子へのクリスマスプレゼントを買うには金がまだ足りねーんだよ』ということでしょうか」

「…っはァ!?
ば、バッカヤロウ!誰がンなこと…」

「ねえ浦飯君、私今日暇なんだけどさあ」

「話逸らすんじゃねーよ」

「ここに、本日限定のテーマパークフリーパスが二枚あってだね」

「聞いてんのかオイ」

「なおかつ私の得意料理はラーメンだったりするんだよね、それはそれは本職も唸らすほどに」

「………お前、何が言いてーんだよ」

「要約すると、『君がそばにいてやるのが彼女にとっては一番のプレゼントなんじゃないのかしら』と」



「……余計な事に気ぃ回してんじゃねーよ、アホ」

「顔真っ赤にして何言ってんだか。

ほらほら、野郎共のオアシスは私に任せてさっさとお行き。
螢子ちゃん泣かせたら承知しないわよ」



「……借りにしとくぜ、ミニスカサンタ」

「可愛いサンタさんありがとう、くらい言えないのかしらね甲斐性無し」



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2009/12/22(Tue) 14:53 

◆蔵馬 




繰り返すことを、恐れた。


人間に焦がれるなんて、あってはならない。
棲む世界も、ことわりも、何もかもが違うのだ。

近付いたら近付いただけ、傷つけて、苦しませて、その果てに待っているのは別離だけだ。

──そう、痛いほどに思い知らされたはずなのに。



「南野君、おはよう」

そう言って微笑む君は、何も知らない。

俺の本当を、何も、知らない。


(すべてを知っても、君は微笑ってくれるだろうか)



2009/12/11(Fri) 13:26 

◆コエンマ 


「コエンマ様、書類を持って参りました。
お目通しの上印をお願い致します」

書類の束をかかえたその霊界案内人の少女は、そろそろとした足取りでコエンマの執務室に入ると、書類の影から首だけ出してそう告げた。

それをげんなりと見つめながらも、コエンマは溜め息と同時に書類を受け取る。

「…ああ…ご苦労。」

「お疲れですね、コエンマ様」

「まあな。
こう毎日毎日書類に追われていれば、溜め息のひとつくらい付きたくもなるわ」

ぽん、ぽん、と目を通しているのか怪しいほどリズミカルに判を押していくコエンマ。

少女はその様子に眉を下げ、何故か一枚だけ渡さないまま後ろ手に持っていた書類をそっと袖口に忍ばせた。

「…では、私これで失礼します」

「ちょーっと待った」

くるりと踵を返した少女の裾を、がっしりとコエンマが掴んだ。
驚く少女に目もくれず、コエンマは少女の袖口にするりと手を滑り込ませる。あ、と慌てて阻止しようとした掌は空を切り、次にコエンマの指先が現れた時、そこには一枚の紙が挟まっていた。

「や、あの、コエンマ様…」

「…記名したらすぐに届けに来いと、ワシはそう言ったはずだが?」

「………ご、ごめんなさい…お仕事があんまり忙しそうだったものですから」

「まったく、余計なところに気を使いおって」

コエンマは呆れたように呟くと、その受け取った紙を、大量に山積みになっている書類の一番最後に入れた。

「コエンマ様…」

「…ま、これで仕事もはかどるというもんだ。

この程度軽くこなせなくては、あれに判を押す資格は無いし──」

にか、と歯を見せて、コエンマは少女に笑いかけた。



「──お前を早く、ワシの妻にしておきたいからな?」



赤く染まった頬にひとつ口付けを落とし、コエンマはまた膨大な書類整理に戻るのだった。



(未来を約すその書類)



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2009/12/05(Sat) 19:19 

◆鈴駒 


「私、子供って苦手なんだよね。
嫌いってわけじゃないんだけど、なんかこう…疲れるというか、うまく関われないというか…」

「…ふうん。」

「年下とあんまり関わったことないからなのかな。接し方がよくわからなくて、混乱しちゃうんだよね」

「…姉ちゃん、それってもしかしなくても、嫌味?」

「……え?なんで?」

「なんでって…
だって、オイラが子供だからそんなこと言うんだろ。

オイラ傷ついちゃうなー。姉ちゃんに、そんな風に思われてたのかと思うと、さ」

「……………」

「…姉ちゃん?
どったの、そんなにオイラまじまじと見て」





「……そう言えば、鈴駒も子供の年だった。

ごめん、なんかあの六人の中で一番常識人っぽいからつい忘れちゃって…」

「あはは、何それ。
…姉ちゃんはそうやって抜けてっから、ほっとけないんだよ」



(幼き達観者)



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2009/12/04(Fri) 18:43 

◆凍矢 


「とある著名な文豪は、
“I Love You”を“今夜は月が綺麗ですね”って訳したらしいけど、凍矢だったらどうして訳す?」

「…唐突に尋ねるにしては、また随分と難しい質問だな。

例えば、お前はどう訳すんだ」

「私?
そうね、私はねぇ。

『とある著名な文豪は、
“I Love You”を“今夜は月が綺麗ですね”って訳したらしいけど、あなただったらどうして訳す?』

かな」

「なら俺は、

『お前はどう訳すんだ?』だ」



(I LOVE YOUをつたえましょう)


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2009/12/04(Fri) 17:58 

◆陣 

「私も空が飛べたらいいのに」



零れるような呟きが、隣で身体を横たえている彼の耳朶をくすぐった。

ささやかな吐息に浅く覚めた微睡みの中、彼はシーツに潜ると甘えるように彼女のの素肌を抱き寄せる。

薄闇に、衣擦れの音。

「…空なら、いつだって俺が連れてってやるだぞ?」

少し気怠げで、それでも普段の朗らかな声音はそのままに彼が言った。けれど彼女は、その言葉に困ったような笑いを向けた。

「だめ。それじゃあ、意味がないの」

「…?なしてだ?」

「私が、陣を追いかけたいからよ」



──カーテンの隙間からは、もう朝の気配が手を伸ばしている。
もうすぐ、連れて行ってしまうのだ。

彼を、彼のいるべき仲間の元へと。

「わからないなら、それでもいいの」

首を傾げる彼にそう言うと、彼女は彼のくちびるに、短く音を立ててくちづけた。

「…でも、これだけわかっていてね」



恋うているのはいつだって、空なんかじゃなくあなたなの。



(あなたに届く翼をください)



.


2009/12/04(Fri) 14:29 

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