それから

□それから
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僕がクラブを辞めて真っ先にしたことは、車の買い替えだった。
外車なんて目立つだけで、駐車場では不自由するし、家族向けにはふさわしくない気がする。
僕は、ジャガーをフォードアの国産車に買い換えた。

三人一緒に出かけられるように、目立つ外車は手放した。以前、オーナーが赤い車がいいと言ってくれたことがあったから、色だけは派手に赤にしたけれどもファミリーカーだ。
あの親子には、永遠に天国のパパがいるから、僕なんかは一生パパなんて呼んでもらえないだろうけど、ママの愛人としては、娘の美佳ちゃんとも仲良くやっていきたいのだ。
髪も金髪ではいかにも水商売なので、黒く染めた。
あの人の隣に立った時、金髪では派手すぎて不釣合いに思えるから。
僕は、あの人にふさわしい男になりたい。

クラブを辞めた後は、阿佐ヶ谷の母の店を継ぐことになっているが、10代の頃の僕と今の僕とでは落ち着きも違っているから、黒髪に戻しても今なら昔ほど騒がれないだろう。
昔は、もてすぎて困ったものだったが…。
女性のあしらい方もある程度覚えたから、今度は大丈夫だろう。
阿佐ヶ谷の店が休みの日曜日は、オーナーも休んでくれるといっているので、昼間は美佳ちゃんを遊園地や海などに連れて行ってあげようと思っている。
僕も母一人子一人で育っているから、いろいろとそのへんのさびしい思いはわかる。
だから、なるべく小さいうちにあちこち連れて行ってあげて、楽しい思い出を作ってあげたいと思うのだ。

そして、昼間は人の良いお兄さんの仮面を被っていた僕は仮面を脱ぎ捨てて、夜はオーナーの愛人に変身する。
彼女が何度もイクまで抱き続ける。
彼女が、
「上原君、もう、ダメ〜!」
と、悲鳴をあげても離さない。
あまりに無我夢中になりすぎて、彼女が失神するまで愛してしまったこともあるけれども、すぐに目覚めてくれた。
「愛人失格ですか?」
と、問うと、
「いいえ、合格よ」
と、にっこり笑顔で答えてくれた。
ああ、なんて素敵な人なんだろう!
オーナーに捨てられるまでは、ずっと愛人でいたいと思った。
僕は、一生、オーナーの愛人のままでもかまわない。
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