マリーゴールド
□忘れられたイツキ
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イツキ「だれって・・・冗談だろ?」
ひきつった笑みを浮かべながらイツキが聞く
しかし、ツバキの反応は変わらない
ツバキ「知りません。貴方はだれ?」
イツキ「そんな・・・。」
ショックのあまりに言葉が続かないイツキの代わりに、彩夏がツバキと話をする
彩夏「あんたが季節を春から夏に変える人でしょ?いろいろあって、イツキは戻ってきたのよ。知らない、なんてことないはずだけど?」
ツバキ「あなたは出逢った相手をすべて覚えているの?」
彩夏「そ、それは・・・。」
口ごもる彩夏
ツバキはそれを見て、桜の木に視線を戻した
ツバキ「そうよ。いつか忘れてしまうなら・・・はじめから覚えなければいいのよ。」
つぶやくように言ったツバキに、イツキは困惑の表情で尋ねた
イツキ「いったいどうしたんだ?ツバキ、君はそんなこと言う人ではなかったはずだよ。前に会ったとき、君は花みたいに笑う人だった。」
ツバキ「そんなこと知らないわ。私・・・なんだかすごく悲しいの。」
それっきり、ツバキは質問に答えることはなく、ただ散っていく桜を眺めるだけだった