紫陽花
□月と太陽
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月見をしよう、と言い出したのは望美だった
望美が昔から月を見るのが好きなのは知っていたので、弁慶は頷いた
「月の国に帰りたいんですか?」
「弁慶さん?どうしてそんなこと・・・。」
「寂しいのでしょう?君は遥か月の天女、月が・・・故郷が、恋しいのでしょう?」
自分を京に留めてしまったことに、この人は後悔したのだろうか
「恋しくないっていうと嘘になるけど、後悔はしてません。」
「本当に?」
「本当です。むしろ、寂しくて不安なのは弁慶さんでしょ?」
そんな泣きそうな顔して・・・
と、望美は弁慶を抱きしめる
「大丈夫ですよ。私は何処にもいきませんから。」
「すみません。」
今の自分は酷く情けないと感じながら、弁慶は苦笑した
「月の寂しい想いが、僕に移ってしまったようですね。」