Novel(etc...)

□The day of beginning.
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―そう、昨日は確か土曜日だった。

仕事を終え、何となく酒が飲みたくなって駅の辺りをうろついていたら、同じく仕事帰りの由紀に会った。

以前から彼女には興味があったので、ダメ元で「メシ食いに行かないか」と誘ってみた。
すると意外にあっさりOKがもらえ、二人で適当な店に入ったのである。

リーと由紀は互いに深道ランキングの上位ランカーだが、直接顔を合わせたのは数えるほどだった。会話を交わしたことなどほとんどない。

誘ってはみたものの、何を話そうか思案していたリーだった。
ところが意外な程会話は進み、別の場所で飲みなおすことになった。

リーは酒にはかなり強い。
いつも誰かと飲んでいてもほとんど酔うことなどない。
ところが昨日は違った。由紀が意外に酒に強かったのだ。
対等に飲める相手がいると思いのほか酒は進む。
話が合う相手とならなおさらだ。

そうして午前零時を回った頃、由紀が時計を見て小さく呟いた。

「あ…」

リーにはそれが何を意味するのかすぐに分かった。

「終電、行っちまったのか」
「ええ」

何となく、自然に、その言葉は口をついて出た。
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