abyss

□僕らは愛さずに生きていけない
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愛しいのだと、恋しいのだと。
そう、囁かれるたびに、頬に触れられるたびに、口づけを繰り返すたびに、ルーク・フォン・ファブレ(偽物だけれど)は彼に惹かれ、絆されていった。そんな自分に少しばかりの意気地の無さを感じつつ、それでもルークはこの状態に概ね満足している。

ちなみに相手は男だ。名前はピオニー・ウパラ・マルクト九世、正真正銘マルクト帝国の皇帝陛下である。
蛇足するなら、あの死霊使い(ネクロマンサー)と呼ばれる帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティスを御し得るのはこの人しかいない。


その陛下がなぜ自分を? などという疑問は考えても無駄なので、考えない。
最近は首都グランコクマに来訪するたびに呼び出されては、取り留めもなく話し、笑い合い、最終的に過剰なスキンシップに雪崩れ込むことが多い。
そういえば、この間、ジェイドにバレてしまって、あの時はいろいろ大変だった。宮殿にブリザードが吹いていたような気がする。思い出すと寒気がするので、思い出そうとする思考をシャットアウトしておいた。



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