abyss

□一番大切な光
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また、だ。
また、かざした手のひらが透けた。

レムの塔で障気を消してからというもの、ふとした瞬間に手のひらだけでなく、身体の至るところが透けるようになった。このことは、誰も知らない。いや、違う。ジェイドは知ってる。


――それは音素(フォニム)が乖離しているからです。
通常の生活をする分には当分問題ないでしょう。ですが、我々の旅はあなたにそれを許さない。
だから、無理をしてはいけませんよ。


ジェイドだって、分かってる。自身が無理をしない、という選択肢がないこと。だから、敢えて口にしたのだ。せめての抑止力になるように。



「ルーク」



呼ばれて子供は吃驚したように視線を手のひらから声の主の方へやった。





今日は久方ぶりにキムラスカ王都バチカルを訪れていた。
インゴベルト陛下(もう軽々しく叔父上とは呼べなくなってしまった)や父上(別の呼び名で呼ぼうとしたら「父と呼んでほしい」と言われた)への報告も兼ねて、公爵邸に寄り、城へも登城したのは良かった。


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