abyss
□つないだ手と手、それでも僕らは諦めない
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子供は手を引かれて走っていた。強く引かれているために、何度も転びそうになって、その度に引いている相手に支えられる。
「どこまで行くんだよ! 俺はレムの塔にっ……」
子供がそう言った途端に相手は止まった。勢いで相手にぶつかってしまったが、そんなことは気にしない。ぜえぜえと息をきらせて座り込もうとすれば、今度は抱きしめられる。
何なんだ、これは!
子供はとてつもない理不尽さを感じてまた叫ぶ。
「何がしたいんだよ! 俺はレムの塔に行くっつってるだろーがっ!」
絞め殺さんばかりにぎゅうぎゅう抱きしめられて、骨が悲鳴を上げている。子供の堪忍袋の緒はいい加減千切れそうだ。だが、それでも相手は動かない。
だいたい、現れた時からして様子が変だった。まるで焦ってるみたいだ(実際に焦っていたのだが)、などと暢気に思っていたのだ。
「アンタ、死にに行くのか」
「誰がだよ。死ぬって決まってねーのに、決めつけんな」
「でも、死霊使いは同じようなものだって言ってたよ」
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