abyss
□声涸れるまで、泣いて、叫んで、喚いて、足掻いて、僕はただ君の名を呼ぶ
1ページ/6ページ
澱んだ空を見て、気持ちが暗くなった。
この澱みを晴らすためには、超振動と一万人分の第七音素が必要らしい。超振動を単独で使えるのは世界に二人きり。アッシュと己だけ。オリジナルとレプリカ。
残すなら、より強い力を持っているオリジナル。
結論、レプリカである己に死ね、てことだ。
……少し泣きたくなった。だから、悪いとは思ったけれど、イオンの使っていた部屋に逃げ込んだ。
奥の部屋にあるベッドに座り込んで、声無く泣いた。
「……っ…う……」
もう主のないベッドは見る間に温もりを持っていった。枕は涙で濡れてしまう。
こんな時は心優しい己の同胞を思い出す。
イオン。
彼だけが己を優しいと言った。(全然優しくなどなかったというのに!)いつも、優しいと言って己に笑いかける。笑いかけられるたびに泣きたくなるほど歓喜した。見捨てられたと思ってたのに。
だけど、その喜びや幸福はあっけなく終わった。
レプリカは遺体さえ残さず乖離して消える。
意味が分からなかった。何でイオンが消えなくちゃならなかったのか、理解できなかった。
.