abyss

□声涸れるまで、泣いて、叫んで、喚いて、足掻いて、僕はただ君の名を呼ぶ
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澱んだ空を見て、気持ちが暗くなった。
この澱みを晴らすためには、超振動と一万人分の第七音素が必要らしい。超振動を単独で使えるのは世界に二人きり。アッシュと己だけ。オリジナルとレプリカ。

残すなら、より強い力を持っているオリジナル。

結論、レプリカである己に死ね、てことだ。
……少し泣きたくなった。だから、悪いとは思ったけれど、イオンの使っていた部屋に逃げ込んだ。
奥の部屋にあるベッドに座り込んで、声無く泣いた。



「……っ…う……」



もう主のないベッドは見る間に温もりを持っていった。枕は涙で濡れてしまう。
こんな時は心優しい己の同胞を思い出す。


イオン。


彼だけが己を優しいと言った。(全然優しくなどなかったというのに!)いつも、優しいと言って己に笑いかける。笑いかけられるたびに泣きたくなるほど歓喜した。見捨てられたと思ってたのに。
だけど、その喜びや幸福はあっけなく終わった。


レプリカは遺体さえ残さず乖離して消える。


意味が分からなかった。何でイオンが消えなくちゃならなかったのか、理解できなかった。



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