abyss

□ノクターン、それは無償の愛
4ページ/6ページ






いや、受け止めているのではなく知らないのだ。その行為が何であるか。知らないから他にすることがない。



「もうやめなさい、ルーク。そんなことをしたところでお前の気は済むまいよ」



紅い子供は鼻を鳴らして頷いた。確かにこんなことをしたとて、何が変わるわけでもない。隣に立つ男もこの子供も憎いが、八つ当たっても事実は変わらない。
朱い子供は自身の偽物。本物の自身とは違う。姿形が似ているだけの空の入れ物。


数日の後に紅い子供は隣に立つ男の思惑を知ることとなった。

ヴァンは朱い子供を自身の家、ファブレ公爵家の人間に見つけさせ、連れ帰らせたのだ! あんまりだと思うには時間はかからなかった。暴れたら牢に入れられて身動きがとれなくなって。たが、絶好の機会が訪れた。見張りは何があったのか居らず、鍵はかけられていない。手には剣(後で考えればおかしい状況であった)。

必死に戦ってたどり着いた自身の家で門前払いされ、絶望だけが広がった。せめて、偽物の様子だけでも探るために、いつだったか見つけた抜け道から屋敷に入り込んで庭園を窺う。


目を疑う光景が広がった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ